世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○食品の安全性に関する問題が今後の飼料需給に影響か


11月の生産予測ではトウモロコシは過去最高の生産量

 米農務省(USDA)が11月に公表した穀物の生産予測によると、2000/01
(2000年9月〜2001年8月)年度の米国のトウモロコシ生産量は、前月の予測を
1.4%下回る2億5,537万トンとなった。今年度の米国のトウモロコシ生産は当初か
ら記録的な豊作が見込まれているが、収穫が始まった9月以降3ヵ月連続して生産
予測が下方修正されたことになる。しかしながら、依然として前年度の生産量を
6.1%上回り、これまでの最高であった94/95年度の生産量(2億5,500万トン)を
上回る見込みである。また、単位面積当たり生産量は137.7ブッシェル/エーカ
ーとなっており、これまでの最高であった94/95年度(138.6ブッシェル/エーカ
ー)に次ぐ水準になるとみられている。 

 なお、主要18州のトウモロコシ収穫率は、11月12日現在で95%とほぼ収穫が終
了している。

◇図:米国産トウモロコシ生産量および単収◇


スターリンク問題がトウモロコシ貿易に影響か

 今年9月、米国で食品として承認されていない遺伝子組み換え(GM)トウモロ
コシであるスターリンクが一部食品に混入していた問題は、その後トウモロコシ
の輸出先である日本や韓国などの国に影響が及び、現在、当事国間でトウモロコ
シ輸出時の検査体制の強化など対応策が協議されている。スターリンクの生産は、
米国産トウモロコシ全体の0.43 %(作付面積ベース)にすぎず、また問題発生後、
生産分はほぼすべて市場から回収されている。しかしながら、今後の状況によっ
ては、米国のほかアルゼンチン、中国といった輸出国のトウモロコシ輸出に少な
からぬ影響を及ぼすことが予測される。

◇図:米国産トウモロコシ輸出量◇


EUでBSE問題対策として肉骨粉の飼料の使用を全面禁止へ

 一方、EUでも食品の安全性をめぐり、飼料の流通に影響を及ぼすとみられる動
きがあった。EU農相理事会は12月4日、EU全域で消費者の不安が広まっている牛
海綿状脳症(BSE)問題の対策として、2001年1月から6ヵ月間、すべての家畜に
対して肉骨粉の飼料の使用を禁止することを決定した。

 EUにおける肉骨粉の飼料の年間生産量は、約300万トン(うち250万トンは域内
消費、50万トンは輸出)となっており、この措置に伴い、今後代替となる飼料の
確保が急務となってくる。代替となる飼料として、植物性タンパク質(油糧種子
のしぼりカスなど)が挙げられており、EUでは今後、大豆など対象となる農産物
の生産振興を図る一方、大豆カスなどの輸入が増加するものとみられる。EUでは、
飼料用として油糧種子のしぼりカスなどを年間5千万トン以上消費しており、約
3分の2は域外からの輸入(大豆カス輸入量は約2千600万トン)に依存している。

 スターリンク問題、BSE問題とも食品の安全性をめぐる問題であるが、これに
関連する飼料も市場規模が大きいだけに、今後の動向によっては世界の飼料需給
に少なからぬ影響を及ぼすこともあるとみられる。

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