◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、2000年6月時点のEU加盟国における乳用経産牛の飼養頭数調査結 果を発表した。今回の発表では、アイルランドやオーストリアなど一部加盟国の 飼養頭数が未集計であるため、域内の牛乳・乳製品生産の今後の指標となるEU 15ヵ国全体での頭数発表とはならなかった。しかしながら、調査結果が発表され た主要酪農国のいずれについても飼養頭数は減少していることから、乳用経産牛 全体の飼養頭数も前年実績を下回ることは避けられないものとみられている。 EUの生乳生産は、生乳生産割当(クオータ)制度の実施により、安定した水準 で推移してきたが、1頭当たりの乳量増加に伴い、飼養頭数の減少が続く状況と なっている。さらに、農家戸数の減少や酪農を取り巻く環境問題の高まりなども、 削減を促す要因となっている。
国別の飼養状況を見ると、農家戸数の減少などにより乳用経産牛をはじめとし て、肉牛を含めた牛全体での減少が見られるドイツ、また、牛海綿状脳症(BSE) の影響による離農や、ポンド高による乳製品輸出の停滞などが続くイギリスでも 減少が大きく、さらに、家畜ふん尿など畜産環境問題への取り組みとして離農政 策が進められているオランダの減少が目立っている。 今後、域内における乳用経産牛の飼養動向は、2000〜01年度にイタリアなど5 ヵ国に生乳生産クオータが追加配分されることや、最近の乳製品価格の上昇など、 増頭を促すいくつかの材料はあるものの、環境問題をはじめ各国ともさまざまな 問題を抱える中で、早期に頭数回復が図られると見込むことは難しい状況にある といえる。 EU主要国の乳用経産牛飼養頭数(2000年6月) 資料:EU統計局 注1:2000年の数値は暫定値 2:ベルギーにはルクセンブルグを含む
このような中、乳用経産牛の飼養頭数減少、春先の天候不良による放牧開始の 遅れなどが影響し、域内の生乳生産は前年を下回る水準で推移している。2000年 1月〜7月の生乳生産は、前年同期実績を0.8%下回る6,915万6千トン(推定値)、 量にして22万1千トンの減少となった。一方、乳製品に対するEU域内・域外から の需要は、引き続き強くなっている。生乳生産の減少や、チーズ生産へのシフト から生産量が減少する脱脂粉乳価格は堅調に推移しており、全粉乳、チーズもこ れに続いている。また、低迷が続いたバターについても、価格はここ数ヵ月間で 上昇に転じている。 今後の域内の生乳生産については、乳製品価格の上昇により生産者の増産意欲 は刺激されるものの、飼養頭数の回復が難しい状況で、前年実績を維持するのは 困難との見方が主流となっている。
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