中国、WTO加盟に向け法制・税制の改革へ


中国、年明け加盟へ向けて前進

 世界貿易機関(WTO)の中国加盟作業部会第13回会議が2000年11月初め、スイ
スのジュネーブで開催された。作業部会のラビエ議長は、中国がこの会議におい
て、法律の再検討や関税割当の管理など主要課題について実質的な一歩を踏み出
したこと、輸入の量的規制や農業政策、貿易に関する知的所有権の問題について
も進展があったとした上で、中国のWTO加盟に向けては、いまだ解決すべき問題
も残っていると指摘した。

 一方、中国交渉代表団の団長を務める龍永図・対外貿易経済合作部副部長は、
作業部会における多国間交渉が大きく進展しつつあり、中国は将来的なWTO加盟
における約束を履行するため、法制改革をはじめとする一連の準備作業を進めて
いることを明らかにした。


法制156件と税制6項目を改革

 中国政府はこれまでに、国内のすべての法令について、WTOのルールに合致す
るか否かの検証を行っており、その結果をまとめた包括的な見直し計画が、11月
9日までに作業部会に提出された。その中で中国は、コンピューターソフトの著
作権保護期間の延長や商標の保護など知的所有権に関する保護強化、流通・サー
ビス分野の営業制限の見直しや外資企業に中国産品の購入・使用を要求する制度
の廃止など、法律・実施細則(施行規則)36件および通達120件、合計156件に及
ぶ法制の見直しを、実施時期を決めて明示している。

 また、国家税務総局によると、中国政府はWTO加盟に備え、近い将来6項目の
税制改革を実施する。その内容は、外資企業と国内企業とで異なる企業所得税
(法人税)の率を一本化することなどを中心に、外資企業への優遇政策を改める
ことが主な狙いとなっている。

 中国では改革開放以来、外資を選択的に取り入れるための外資系特定業種に対
する優遇税制などにより、税率が非常に複雑なものとなっている。この外資企業
の優遇政策については、国内でも批判が出ていたことに加え、@国家財政に対す
る税収の寄与が年々重要性を増していること、AWTO加盟による市場開放で、外
資優遇の必然性が薄れること、B社会保障体制確立のために安定した税収が必要
となることなどから、抜本的な改革が進められることとなった。

 税制改革ではこのほか、ぜいたく品を対象とした環境汚染型増値税など新たな
増値税(付加価値税)の導入、輸出入加工区からの輸出製品の税率引き下げ、遺
産相続税や燃油税など新たな税制度の導入なども検討されている。


中国企業家の7割が「WTO加盟はビジネスチャンス」

 中国企業家調査系統が11月11日に発表した、中国の企業経営者5,075人を対象
としたアンケート調査結果によると、71.7%が中国のWTO加盟はビジネスチャン
スをもたらすと期待している。また、一方、ほぼ同率の71.9%が、中国のWTO加
盟による対外開放に「大きな圧力」または「ある程度の圧力」を感じており、
同国の企業経営者にとって、中国のWTO加盟はチャンスであるとともに、挑戦で
もあるという構図が浮き彫りとなっている。

 こうしたWTO加盟がもたらすチャンスと圧力への対策(複数回答)として、
57.2%が「技術刷新への投資」と回答、そのほかに42.8%が「国内外企業との合
資協力の強化」、42.3%が「優秀な人材の採用」、37.7%が「情報化の推進」を
挙げ、「価格を引き下げる」は20.1%だった。また、このアンケート調査により、
中国の企業経営者の6割以上が、WTO加盟後の社会保障制度の確立に深い関心を
寄せていることが明らかとなった。

 なお、経済のグローバル化に対応するため、中国の企業経営者が重視している
国際市場は、「香港、マカオ、台湾」が22.6%、「米国、カナダ」が21.5%、
「日本、韓国」が20.3%の順となっている。

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