米国、関税割当に関する提案をWTOに提出


市場アクセスの重要部分−TRQについて個別的に提案

 米国政府は11月17日、世界貿易機関(WTO)に対して、関税割当(Tariff−Rate 
Quota:TRQ)に関する交渉提案を提出した。

 この中で同政府は、移行措置的なTRQを段階的に廃止していくべきとの方向性を
示した上で、それに向けたステップとして、まず輸入国が貿易を阻害する目的で
TRQを管理することのないよう追加的な規律を定めることを提案している。この
規律は、輸入許可手続きの透明性の向上、TRQの実施などに関する情報の適時的か
つ効果的な提供、市場の需要を反映させるためのTRQ対象品目の非制限化(バル
ク品目への限定の禁止や輸入制限的な規格の排除など)、未使用輸入ライセンス
の再配分といった原則に基づくべきとされている。

 さらに、割当数量の大幅な増加や2次税率の大幅な削減のほか、割当数量に対
する輸入実績に応じて1次税率(無税または低率)を引き下げること、税率の引
き下げに当たっては、各国間の不均衡を是正するとともに、すべてのWTO加盟国
に市場アクセス機会を提供する形で割当数量を拡大させていくという手法をとる
こと、割当数量に対して輸入実績が少ない場合に、1次税率を引き下げるトリガー
システムを定めることも提案されている。

 米国政府は6月末に国内支持、市場アクセス、輸出競争の分野を含む包括的な農
業交渉提案をWTOに対して提出していたが、今回は市場アクセスの改善上重要視
されているTRQに焦点を絞って、提案されたものである(6月末提案の詳細につ
いては、本誌2000年8月号「トピックス」参照)。


1,300件を超えるTRQ、大幅な税率の国別格差が存在

 10月に発表された米農務省(USDA)のTRQに関する報告記事によれば、99年末
時点で37ヵ国から1,300件(品目)を超えるTRQがWTOに通報されているという。
国別では、ノルウェー(232件)、ポーランド(109件)およびアイスランド
(90件)が上位3ヵ国で、全体の約3分の1の件数を占めているが、一般的には工
業先進国でより採用されているとされ、EUで87件、米国でも54件が通報されて
いる。

主要国におけるTRQの主な品目、平均税率等
trq.gif (21444 バイト)
 資料:USDA、WTO
  注:99年度末時点のWTOへの通報ベース

 品目別では、野菜・果物が全体の約4分の1を占める354件で最も多く、これに続
いて、食肉(245件)、穀物(217件)、乳製品(181件)、油糧種子(124件)の
順となっている。

 各国間の税率格差の例として、韓国の場合、平均で1次税率が21%、2次税率が
366%、カナダについては、それぞれ8%および203%、米国については、それぞ
れ10%および29%などと報告されている。

 また、個別産品の例として、一般的に税率が高いとされるバターについて、韓
国の場合、1次税率が40%、2次税率が99%、カナダについては、それぞれ12%お
よび299%、米国については、それぞれ8%および96%などとなっている。


TRQの恩恵を受けている業界は提案に否定的

 今回の提案に当たり、バシェフスキー通商代表は、米国生産者にとっての市場
アクセス機会を向上させることは、WTO交渉における米国の最優先課題であると
述べ、TRQの改善に尽力する姿勢を示した。一方で、TRQの恩恵を受けている品目
の生産者の間には、税率の引き下げや割当数量の拡大に否定的な者もいるよう
で、こうした提案は、必ずしも米国農業関係者の総意とは言えない面もありそう
だ。

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