◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、2000年12月時点のEUにおける牛の飼養頭数を発表した。今回の 発表では、EU加盟国であるギリシャの飼養頭数が未集計のため、EU15ヵ国全体 での総飼養頭数発表とはならなかったが、フランス、イタリアなど数ヵ国を除き 各国とも飼養頭数が減少していることから、最終的には前年同期を1.3%下回る8, 160万頭程度になるとみられている。EUの牛飼養頭数は、96年の牛海綿状脳症 (BSE)問題の発生、生乳生産割当(クオータ)制度下での乳牛1頭当たりの乳 量の増加など、いくつかの要因により95年をピークに下降しつつあり、特に、最 近の畜産環境問題に対する関心の高まりやBSE問題の再燃が、飼養頭数減少にさ らなる拍車をかけている。 ◇図:EU15ヵ国の牛飼養頭数(各年12月時点)◇
全体の飼養動向を見ると、肉用種、乳用種ともに減少が目立っている。肉用種 については、96年のBSE問題発生後に実施した子牛と畜奨励事業の終了や食肉需 要の回復を受けて、99年は頭数回復の兆候がみられた。しかし、2000年に入り畜 産環境問題に対する関心の高まりや、BSE問題の再燃・拡大による肉牛価格の暴 落など飼養頭数の増加につながる要因は見いだせなかった。また、乳用種につい ては、EUのクオータ制度による各国への生産割当が実施される中で、乳牛の改良 により1頭当たり乳量が増加していることから、飼養頭数は減少している。域内 の乳製品需要については、チーズなど一部乳製品について需要は高いものの、バ ターの過剰在庫など不透明な部分を抱えている。輸出補助金の削減による国際競 争力の低下も伝えられる中では、飼養頭数回復につながる明るい材料は見えない 状況にある。 EU主要国の牛飼養頭数(2000年12月) 資料:EU統計局 注1:数値は暫定値 2:ベルギーにはルクセンブルグを含む
今回の飼養頭数減少の一因になったとされるBSE問題の再燃は、各国で沈静 化の兆しを見せているが、飼養頭数回復を占う域内の肉牛価格は、消費の低下に よる低迷が続いている。2001年4月の成牛価格は、EU平均で100kg当たり108.9ユ ーロ(約11,980円:1ユーロ=110円、左表参照)と前年11月から連続して同期 実績を下回っている。また、今年2月のイギリスでの口蹄疫発生は、牛肉への新 たな消費低下を招いている。落ち込んだ消費を刺激する材料が見つからない中で、 域内の牛肉消費回復にはかなりの時間を要するとの見方もあり、今後の牛飼養頭 数にさらなる影響を与えるとみられている。
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