シドニー駐在員事務所 野村 俊夫、幸田 太
ひとくちメモ 豪州では約1億1,500万頭(総人口の約6.4倍)の羊が飼養されており、中国に 次いで世界第2位の羊生産国となっている。豪州は羊の背に乗って発展したと言 われるほど羊毛産業が重要であったため、現在飼養されている品種もメリノーに 代表される羊毛種が圧倒的に多いが、近年は国内外のラム肉需要の増加に刺激さ れてサフォークなどの肉用種も増加している。肉用種はメリノーに交配して肉質 改善に利用されるケースが多い。豪州は年間約62万トン(マトン30万トン、ラム 32万トン)を生産し、約半数の31万トン(マトン21万トン、ラム10万トン)を米 国やEU、中近東などの各国に輸出している。今回は、主に肉用種の種畜牧場を訪 問したので紹介する。
南オーストラリア州にある牧場の入口。 ここでは通常のサフォーク(頭部と脚部 が黒色)を改良したホワイト・サフォー クも生産している。通常のサフォークは メリノーに交配するとその羊毛色に悪影 響が出ることがあり、メリノー生産者に 敬遠されるので改良が進んだ。 |
南オーストラリア州のサフォーク放牧 風景。訪問した時は厳しい干ばつの最中 であり、立ち枯れした草が多い中で少し でもおいしい牧草を求めて動き回ってい た。 |
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訪問した牧場で羊の毛刈り作業(シェ アリング)が行われていた。刈られてい るのはメリノー種。働いているのは専門 の毛刈り職人で、牧場を移動しながら歩 合で賃金を稼ぐ。職人の腕前により作業 の効率が大きく変わるという。 |
刈った羊毛は品質による選別を行った 後、機械で圧縮して1個約180Kgの羊毛 ベールにする。極めて旧式な圧縮機であ ったが羊毛産業の歴史を感じさせるもの であった。 |
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サフォークに穀物補助飼料を給与して いた。牧草のみでは栄養が不足するため、 1日2回与えているとのこと。羊はいず れも種畜または種畜候補なので体型が優 れている。 |
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牧場内の道端に積まれている非常時用 の乾草ベール。雨がほとんど降らないの で屋根付きの建物もビニールカバーも不 要である。この道の奥に牧場主の住居が あるが、歩いて行ける距離ではないほど 広い。 |
牧用犬は極めて良く訓練されており、 羊群を集める時に大活躍する。1頭でも 群から離れるとすぐに追い戻す。各地の 農業祭では牧用犬のコンテストも行われ る。 |
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訪問した牧場のサフォークが今年のシ ドニー・ロイヤル・イースター・ショー で見事に優勝した。はるばる南オースト ラリア州から家畜とともに来た牧場主夫 妻の顔がほころぶ。 |
これまでに獲得した数々の賞と記念品。 多くの種畜牧場は施設内にセリ場を設け ており、毎年1回、多数の家畜商を集め てオークションを行う。 |
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