◇絵でみる需給動向◇
豪州酪農庁(ADC)によると、2000年7月〜2001年2月の生乳生産量は、前年 同期を3.5%下回る789万3,900キロリットルとなっている。2000/01年度としては 4ヶ月を残してはいるものの、搾乳のピークは既に過ぎていることから、89/90 年度以来11年度ぶりに生乳生産が前年度を下回る可能性がでている。 ◇図:生乳生産量前年比の推移◇
2000/01年度2月までの生乳生産量が減少している要因としては、主要酪農生 産州のビクトリア(VIC)州の生産量の落ち込みが挙げられる。2月までのVIC州 の生乳生産は、前年同期と比べて2.3%減と豪州全体の3.5%減よりも減少率は小 さいものの、豪州全体の生産量の7割近くを占めていることから、全体に与える 影響は大きくなっている。 VIC州の生産量の減少要因は、酪農地帯における干ばつである。VIC州全土が干 ばつという訳ではなく、一部の酪農地帯での飼養状態の悪化が乳量に影響を及ぼ したと考えられる。 その他のすべての州においても2月までの生産量は前年同期比で減少しており、 特に生産の1割弱を占めるクインズランド(QLD)州では10.6%減とその減少が 顕著である。各州ともシーズンのピークである10月頃から前年同月を下回り始め ており、年度後半になるにつれて生産状況は厳しいものになっている。 ◇図:州別生乳生産の前年同月比の推移◇
豪州の酪農産業では放牧が主体であるため、生乳生産は気象条件の影響を受け るところが大きい。豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)によると、今後数十年 間に気温の上昇と豪州南西部と南東部、それにQLD州での降雨量の減少が予測さ れている。その一方で、豪州北部や東部では洪水が起こるほどの大雨が予測され ており、各地で気象変化が起こるとしている。 これまで増加の一途をたどっていた生乳生産であるが、目前の干ばつの問題と 長期的な天候不順による生産減少も懸念されることから、今後の豪州酪農業界に とってはマイナスの要因が浮かんできた。豪州にとって酪農乳業は大きな産業で あるだけに、今後の動向が注目される。
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