◇絵でみる需給動向◇
ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2000年のEUの域外向け乳製品 輸出は、高まる需要を反映し大幅な増加となった。中でも脱脂粉乳については、 世界的なひっ迫感を受けた国際価格の高騰により、度重なるEUの輸出補助金削 減にも関わらず前年比31%増の35万千トンを記録した。また、チーズについても、 原油価格の上昇を背景とする中東諸国向け輸出の増加や、アジア各国での安定し た消費が好材料となり、前年比14.9%増の45万千トンを記録し、過去最高の輸出 量となった。一方、バターについては、域内需要の不振から介入在庫が積み増し される中で、チーズ同様中東諸国向け輸出の増加が目立ち、前年比8.9%増の17 万千トンとなっている。 域外向け乳製品輸出量 資料:ZMP
このように域外への乳製品輸出が増加する反面、2001年(1月〜3月)の生乳 生産は、前年同期比で1.1%の減少と低調な滑り出しである。これは、北ヨーロ ッパを中心とする長雨の影響よる放牧の遅れや、牛海綿状脳症(BSE)問題の再 燃・拡大およびイギリスでの口蹄疫発生による乳用経産牛のとう汰などが要因と みられる。EUの生乳生産割当(クオータ)制度の下、域内の乳用経産牛飼養頭数 は減少傾向であり、特にイギリスでは、ポンド高により域内からの乳製品輸入が 急増するとともに、今回の口蹄疫発生により、国内の酪農経営は壊滅的な状況に あるとみられている。このため、今後の生乳生産についても、これまでの生産水 準を越えるのは難しいとの見方も出ている。 ◇図:生乳生産量の推移◇
一方、乳製品の価格については、チーズ、脱脂粉乳ともに高まる需要を反映し、 堅調に推移している。また、需要の不振から価格の低迷が続くバターについては、 3月中旬から開始された民間在庫補助制度(PSA)により、余剰バターの多くが この保管対象になると期待されており、価格はやや上向きつつある。生乳生産の 減少が予測される中でEUの乳製品生産は、チーズに代表されるようにより付加価 値の高い製品の生産力を高めており、今後の動向が注目される。 ◇図:主要乳製品価格の推移(ドイツの平均取引価格)◇
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