特別レポート
企画情報部
EU委員会は、毎年、「農産物市場の見通し」と題する報告書を発行し、EU域 内における7年間(2000年〜2007年)の農畜産物に関する長期需給見通しを明ら かにしている。 一方、飼料穀物については、米農務省(USDA)が開催した「農業観測会議」 や豪州農業資源経済局(ABARE)開催の「農業・資源観測会議」の席で、需給見 通しが報告されている。 ここでは、主要国の畜産物需給見通しとして、米国および豪州(畜産の情報 「海外編:2001年5月号」特別レポート)に続き、EU委員会が発行した報告書の 中から主要な畜産物について、その後の動向を踏まえながら概要を報告するとと もに、飼料穀物については、USDA、ABAREの需給見通しを報告する。
EU委員会では、各農産物の需給見通し作成に際し、農業政策や経済状況などに ついて一定の前提条件を定めている。主な前提条件は以下の通りである。 なお、今回の見通しは、2000年10月時点における諸条件を基に作成しているた め、その後のEU各国に拡大した牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃や、イギリスな ど数ヵ国で発生した口蹄疫などの影響は、今回の予測数値に加味されていない。 ・農業および貿易政策 農業政策については、現行の農業規則および2000年から2007年の間に既に実施 が決定されたものを適用し、追加的な緊急政策については加味していない。 また、貿易政策については、ガット・ウルグアイラウンド(UR)農業合意が20 07年まで継続すると仮定し、2000年にEU加盟候補国10ヵ国と合意した貿易協定の 内容も含んでいる。 ・一般的な経済指標 2000年から2007年におけるEU域内の人口増加率は平均0.23%、経済成長率(GD P)は平均3.06%、インフレ率は平均1.86%とする。 ・為替相場 EUの共通通貨であるユーロに対し、最も影響を与える米ドル為替相場について、 2000年から2007年の平均為替相場を、1米ドルに対し1.02ユーロとする。 EUの主要経済指標 資料:EU委員会 注:為替レートは米ドル対ユーロ (1)食肉 @牛肉 減少が予測される牛肉生産 EUの牛肉(子牛肉を含む)生産は、96年に問題となった牛海綿状脳症(BSE) により一時的に減少したが、その後の安定した経済成長やBSE対策による牛肉消 費の回復を受けて徐々に拡大しつつある。キャトルサイクルに伴う牛肉生産の減 少が98年から99年にかけて終了したことから、2000年以降の牛肉生産については 増加に転じるとみられる。今後の予測では、2001〜02年にピークを迎え、2004〜 05年に再び減少、また、2007年以降に再度ピークを迎えるとみられる。一方、牛 肉生産の基となる牛の飼養頭数については、EU域内の乳用経産牛飼養頭数の減少 などにより、長期的には微減傾向になることが予測される。これは、EUの生乳生 産割当(クオータ)制度の下、乳用経産牛1頭当たりの乳量が増加する中で、飼 養頭数の維持が難しくなっていることによる。また、畜産を取り巻く環境問題の 広がりも頭数減少に拍車をかけている。このため、と畜頭数にも影響を及ぼし、 2001〜02年の生産実績を最高に、今後、減少傾向で推移すると見られる。 1人当たりの牛肉消費は徐々に低下 96年のBSE問題により大きく減少したEUの牛肉消費は、その後のBSE対策の実 施や安定した経済成長により徐々に回復している。特に99年から2000年にかけて の回復は著しい。今後の消費見通しについては、豚肉や家きん肉などに対する需 要増から、1人当たり年間牛肉消費量の減少が見込まれているが、同時に、実質 的な牛肉価格の引き下げが図られることから、小幅な減少に留まるものと予測さ れる。 安全性追求の観点からEU域外からの牛肉輸入は停滞 EU域外からの牛肉輸入は、これまで、減少傾向にあったが、2000年は需要の回 復を反映し、過去最高水準が予想される。今後、中・東欧諸国との貿易協定によ り新たな輸入の増加が見込まれているが、BSEやホルモン牛肉などの問題をはじ めとする食肉の安全性を求める声が強まるにつれ、EU域内の消費者は、原産地表 示が確立された域内産牛肉に向かうとみられる。このため、域外からの牛肉輸入 は、それほどの伸びは見せずに停滞が予想される。 為替の影響を受け牛肉輸出は将来的に増加も 現在、EU域外に輸出する牛肉の大部分は、最高で市場価格の40%に設定された 輸出補助金が付けられたものである。しかし一方では、特定品目に対しての輸出 補助金削減や米ドルに対するユーロ安により、補助金なしでの輸出が行われてお り、その数量も増加傾向にある。今後、中期的視点に立てば、牛肉の国際価格は、 主要国での生産減少により堅調な推移が予測されることから、EUとの価格差も徐 々に縮まるものとみられる。このため、キャトルサイクルによる牛肉生産の増加 を起点に、2000年から2007年にかけてのEU域外向け牛肉輸出は、約30%程度の増 加が期待される。 EUにおける牛肉需給の長期見通し 資料:EU委員会 注1:枝肉重量ベース 2:子牛肉を含む A豚肉 緩やかな伸び率ながらも生産は増加 2000年の豚肉生産は、輸出補助金の削減などで利益率が低下したことから、前 年に比べ約2.5%の減少が見込まれている。養豚を取り巻く状況も環境問題の高ま りなど厳しさを増していることから、高い生産を記録した1996年から97年にかけ ての水準に回復することは当面、難しい状況にある。しかし、2001年以降の見通 しについては、生産コストの削減や消費需要の拡大により、豚肉生産は増加に転 じるとみられ、中・長期的にも、伸び率はかなり緩やかではあるが、成長の可能 性が予測される。 豚肉消費は今後8年で2%の伸びを期待 過去2年にわたり記録された1人当たりの年間牛肉消費量の回復は、予想外に 大きなものであった。2000年の豚肉消費量は前年比約1.1%の減少が予想されるが、 今後の消費見通しについて、鶏肉ほどの伸びは見せないが、長期的な需要の増加 が見込まれる。1人当たりの年間豚肉消費量は、99年の44.49kgから2007年には45 .34kgへと2%弱の伸びとなり、今後の価格動向によっては、さらなる伸びが期待 できる。 短期的な豚肉輸出は大幅な減少、中期的には増加も EU域外からの豚肉輸入については、中・東欧との農畜産物に関する貿易協定に より、中期的には増加が予測される。 一方、EU域外への豚肉輸出の見通しについては、99年に記録した高水準の輸出 実績と比較して、域内向けに流通量が増加することから短期的には大幅な減少が 予測される。しかし、中期的視点に立てば、成長を続ける国際的な豚肉貿易の中 で、EU産豚肉は徐々に市場規模を拡大させるであろう。 EUにおける豚肉需給の長期見通し 資料:EU委員会 注:枝肉重量ベース B家きん肉 最大の伸びが予想される生産と消費 EUの家きん肉生産と消費の見通しは、今後、食肉の中で最大の成長が予測され ている。これには、EU域内での消費需要の高まりと輸出増加が主な要因として挙 げられている。家きん肉生産は、ベルギーでのダイオキシン問題やイタリアでの 鳥インフルエンザの発生など、99年から2000年にかけて減少となったが、今後の 年間生産予測では、99年の8.8百万トンから2007年には10.2百万トンへと、8年間 で実に15.9%の増加が見込まれる。 安全性の問題も消費拡大を促す要因 生産を押し上げる1人当たりの年間家きん肉消費量は、99年の21.4kgから2007 年には24.5kgへと、生産と同様に8年間で14.5%の増加が見込まれる。このよう に、生産、消費が増加する背景には、家きん肉が他の食肉に比べて価格面での優 位性があることはもちろんのこと、BSE問題などに代表される牛肉などの安全性 に対する消費者の疑念も、増加を促す要因として挙げられる。 EU域外向け輸出も増加の予測 EU域外からの家きん肉輸入は、中期的に見るとわずかな増加が予測される。こ れは、UR農業合意に基づくミニマム・アクセスの実施やその他の貿易協定などに よるものである。 一方、EU域外への輸出については、EU産家きん肉価格は、現状、国際価格より も若干高めであるが、輸出市場の規模が拡大することにより、輸出増の機会が見 込まれる。 EUにおける家きん肉需給の長期見通し 資料:EU委員会 注:可食重量ベース C食肉消費の推移 消費量の約5割を占める豚肉 グラフでも示すとおり、EU域内における1人当たりの年間食肉消費量は、今後 も微増傾向で推移することが予測される。この結果、食肉消費量は、99年の88.3 kgから2007年には93.0kgと8年間で5.3%の増加となる。1人当たりの食肉消費に ついてその内訳を見ると、消費の中心は主に豚肉であり、2000年の数値では、全 体の約5割を占めている。豚肉の消費は、中・長期的に見ても増加が予測される が、消費全体に占める割合は家きん肉消費が台頭する分、若干減少するとみられ る。 ◇図:EUにおける1人当たり食肉消費の見通し◇ 食肉消費の伸びを支える家きん肉 中・長期見通しの中で、1人当たりの年間食肉消費量を増加させる最大の原動 力となるのは家きん肉である。食肉消費に占める割合は、2000年の23.7%から20 07年には26.3%へと拡大し、豚肉に次ぐ位置を占めることになる。 一方、牛肉については、2000年の22.9%から2007年には21.1%へと減少、羊・ ヤギ肉についても、同じく4.1%から3.8%への減少が予測される。 (2)牛乳・乳製品 @生乳生産および飼養頭数 生乳供給数量は、ほぼ安定化 EU域内の生乳供給量は、2000〜02年、2005〜08年にかけて予定されているEU の生乳生産割当(クオータ)制度の見直しによる生産枠の拡大により、増加が期 待されている。しかし一方では、99年に2000〜02年分の生産枠を超えた生乳生産 が行われ、供給量は大きく増加した。2000年の生乳供給量は、99年と比べてわず かに減少し、2001年以降は約144百万トン台での安定的生産が見込まれる。2000 〜02年の生産枠の拡大分は、99年の生産増によりすでに取り込まれており、短期 的には、大幅な供給量増加には結びつかないと予想される。 減少が見込まれる乳用経産牛飼養頭数 今後の生乳生産の見通しについては、2005〜08年にかけて計画されている生産 枠の拡大時に、再び増産が予測される。 一方、生乳生産の増加に併せ、乳製品の支持価格も削減されることから、実質 的な増加率はかなり低く抑えられる。なお、この間における乳用経産牛飼養頭数 は、クオータ制度の下、乳用経産牛1頭当たりの乳量が年々増加する中で減少し、 99年の21.2百万頭から2007年には18.7百万頭へと、率にして12%近くも低下する。 EUにおける生乳生産、供給、頭数の長期見通し 資料:EU委員会 注:頭数は各年12月末 A主要乳製品の動向 ◎チーズ 安定した生産増となるものの輸出は減少 EUのチーズ生産は、域内の需要拡大や域外向け輸出の増加を受けて長期的にも 安定した増加が見込まれる。過去、EU域外へのチーズの輸出は、98年から99年に かけて減少したものの、長期的な見通しでは、原料価格の低下に伴う生産コスト の削減や、高値で推移する国際価格などに刺激され、輸出市場でのEU産チーズの 価格競争力が高まるとみられる。短・中期的には、輸出補助金の削減などにより 輸出量は減少するものの、その後は、98年以前の輸出水準である年間420〜430万 トン台のレベルに戻ることも予想される。 一方、域外からの輸入見通しについては、UR農業合意や、他の貿易協定などに より実質的な増加が見込まれる。 1人当たりの年間消費量はかなりの増加 1人当たりの年間チーズ消費量については、生産と同様に大きな伸びが期待で き、99年の17.8kgから2007年には19.2kgへと8年間で7.9%増加し、年平均1.0%の 伸びとなる。消費需要の高まりに伴うチーズ生産の拡大は、原料となる生乳の供 給量をチーズ向けに増加させることにつながるため、バターや脱脂粉乳などの乳 製品生産に影響を与えるかもしれない。 EUにおけるチーズ需給の長期見通し 資料:EU委員会 ◎バター 生産、消費ともに減少と予測 EUのバター生産は、供給される生乳の乳脂肪分上昇にも関わらず、わずかに減 少が予測される。これは、他の乳製品、特にチーズの生産がより一層拡大し、生 乳供給のチーズ向け仕向け割合が高まるためである。 一方、バターの消費見通しについては、現在の総消費量の約30%が補助により 支えられたものであることから、補助金の削減に伴い消費量は少しずつ減少する。 バター消費を1人当たりの年間消費量で見ると、2000年には4.63kgであるものが 小幅な減少が続くことにより、2007年には4.36kgへと減少することが予測される。 輸入、輸出ともに中・長期的には安定化 EU域外からのバター輸入については、UR農業合意に基づくミニマム・アクセ スの実施による関税割当相当分の輸入が見込まれることから、短期的には増加し、 中期的には年間110千トン台で安定すると見込まれる。 一方、域外への輸出については、98年のロシアの通貨危機による落ち込みがあ るものの、短期的には回復が予想され、約200千トン台で推移するとみられる。 仮に、この輸出見通しを下回る場合、EUの介入在庫数量は予測以上に増加するこ とになる。 EUにおけるバター需給の長期見通し 資料:EU委員会 ◎脱脂粉乳 生産は減少、飼料用需要も低下 中・長期的に見ると、EUの脱脂粉乳生産と消費は、ともに減少傾向となる。こ れは、チーズなど他の乳製品生産が拡大するためであり、脱脂粉乳の生産見通し は、99年の1.18百万トンから2007年には978千トンへと8年間で17%の大幅な減少 が予測される。脱脂粉乳の消費については、食用需要がほぼ安定して推移すると 予測されるのに対し、飼料需要は、他の飼料向け産品の価格引き下げが見込まれ るため、これらへの移行により長期的に低下するとみられる。 輸出は拡大するも、EUのシェアは縮小 EU域外からの脱脂粉乳の輸入については、中・東欧諸国との貿易拡大により中 期的には増加し、年間10万トン台で推移する。ただし、脱脂粉乳の輸入は、各年、 大きな変動があるため、この上下変動を考慮に入れ、平均値として出した数値で ある。 一方、域外への輸出については、世界市場での脱脂粉乳貿易が拡大することか ら、中期的には増加するものの、EU産のシェアは、ニュージーランド、オースト ラリアの躍進による縮小が見込まれる。 EUにおける脱脂粉乳需給の長期見通し 資料:EU委員会 注:バタミルクパウダーを含む
米農務省(USDA)が毎年2月、「農業観測会議」を開催し、米国における主 要農産物の需給状況や今後10年間(予測期間は2001年〜2010年)の長期見通しを 発表している。また豪州では、毎年ほぼ同時期に農林漁業省の豪州農業資源経済 局(ABARE)が「農業・資源観測会議」を開催し、短中期的(予測期間は2005/ 06年度まで)な予測を発表している。食肉等の主要畜産物については、本誌前月 号(2001年5月号)でその概要をレポートしたので、ここでは、飼料穀物につい てその概要をレポートすることとする。なお、需給予測策定に当たっての前提条 件については、本誌前月号で記述しているので参照していただきたい。 (1)米国 @飼料穀物の概要 生産量は増加するものの在庫量は減少 生産量は、予測期間初年の2001/02年度を除き特に単収の増加を背景として増 加するとみられている。飼料作物の太宗を占めるトウモロコシについては、さら にそのシェアが高まる。またトウモロコシ以外の飼料作物のうち、ソルガムにつ いては、予測期間を通して緩やかな生産量増加が見込まれるが、大麦、エン麦に ついては顕著な変化が見られない。トウモロコシ以外の飼料作物については、20 01/02年度以降収益性が改善されるが、トウモロコシと比較すると依然として低 水準である。輸出については予測期間に20%増加するとみられる。ただし今後世 界的な需要増加があるものの、米国産飼料穀物は予測期間を通して厳しい国際競 争に直面する。期末在庫量は、予測期間を通して減少し2,700万トン(90年代平 均4,100万トン)となる。こうした在庫量の減少を反映して、価格は期間を通し て上昇するとみられる。 Aトウモロコシの需給状況 生産量は着実に増加し15%の増加 作付面積は、実収入が低いことから予測期間初期は減少するものの、トウモロ コシ需要の増加と価格の回復により2003/4年度には増加に転じ、その後は増加 傾向が続くとみられる。トウモロコシの作付け農地は、ほとんどが大豆と競合し ており、広く大豆との輪作が行われている。実収入は、2001/2年を除く期間に おいてトウモロコシが大豆を上回る。トウモロコシおよび大豆価格はいずれも今 後数年間低水準となるものの、大豆のローンレートはトウモロコシに比べて有利 となっている。2001/2年度はマーケッテングローン給付が、大豆の作付けによ り有利に働き、トウモロコシの作付面積が減少し大豆が増加するとみられる。 単収は、品種改良および生産技術(作付け時期や効率的作付け)の向上等によ り、予測期間を通して増加傾向が続く。生産量は予測期間を通して増加し、2004 年にはこれまでの最高である102億ブッシェル(2億5,908万トン)を超えるとみ られる。 ◇図:米国のトウモロコシ、大豆の作付面積、農家販売価格(予測)◇ 需要量はさらに増加 トウモロコシの国内需要水準は、予測期間の開始時点で既に高水準にあるが、 増加傾向は期間を通して持続する。飼料等向け需要量は、穀物を消費する家畜の 増加により、予測期間を通して増加する。これは、豚および牛がおおむね増加を 続けるのに加えて、ブロイラー生産が着実に増加するためである。さらに、トウ モロコシ以外の飼料等向け作物が、予測期間初期より相対的に減少するためであ る。また、食料・種子・工業向け需要量は、予測期間の開始時点で既に過去最高 水準にあるが、さらに予測期間を通して増加する。 ◇図:米国のトウモロコシ需給の推移(予測)◇ 輸出は競争激化するものの後半は回復 輸出量は、80年代、90年代と比べて大きく増加するが、他の輸出国との競争が 強まり予測期間初期に緩やかに減少し2004/05年度以降回復基調となる。このた め2006/07年度までは、これまでの最高である79/80年度の記録には達しない。 米国のトウモロコシ輸出は、低水準の国際価格が追い風となるものの、輸出量の 回復は、いかに国際競争力を維持できるのかによって大きく左右される。 米国におけるトウモロコシの需給予測 資料:USDA 注1:2000/01年度は見込値、2001/02年度以降は予測値 2:穀物年度は9〜8月 Bその他の飼料用穀物 ソルガムの需給はバランス 生産量は2010/11年度までに6億7千万ブッシェルまで増加する。これは作付 面積が、価格の上昇と生産者収入の増加により予測期間を通して増加することと 単収の増加による。需要量は、飼料等向けはあまり変化ないものの、工業向けな どで増加する。また輸出量は、メキシコ向けが増加することから着実に増加する。 この結果、需要と供給がバランスして増加するため、予測期間を通して期末在庫 は変化がない。 大麦は飼料等向けを中心に消費増 生産量は、予測期間を通して緩やかに増加し、2010/11年度に3億6,500万ブ ッシェルに達する。作付面積は、生産者収入が相対的に有利性が小さいため期間 を通じて変化がない。また単収は、引き続き増加する。供給の増加分は飼料等に 向けられ、ビール用酵母など食料・工業用向け需要は増加しない。輸出量は、年 間7千万ブッシェルとなり、ガット・ウルグアイラウンドで合意された補助金付 き輸出数量の上限となる。また輸入量は、5,500万ブッシェルで変化がない。平 均価格は上昇し、2010/11年度には2.40USドル/ブッシェルに達する。 需要増でエン麦輸入量増加 作付面積は、長期的な減少傾向が止まり、予測期間を通じて変化がない。生産 量は、1億4千万〜1億5千万ブッシェルであるのに対して、消費量は予測期間 に2億4,500万ブッシェルから2億7,500万ブッシェルに増加する。従って輸入量 は1億ブッシェル(供給量の32%)から1億2,500万ブッシェル(供給量の38%) に増加し、生産量と消費量の差をカバーすることとなる。食料用の需要量は、人 口の増加により非常に緩やかに増加する。飼料等用の需要量は、1億7,500万〜 1億9,500万ブッシェルの間で推移する。 (2)豪州 飼料穀物生産量は2002/03年度を底に徐々に回復へ 穀物全体の作付面積は、2000/01年度(2,090万ヘクタール)から2005/06年 度(2,170万ヘクタール)にかけて増加するものの、飼料穀物(大麦、エン麦、 ライコムギ、ソルガム、トウモロコシ)は、同期間を比較すると3.4%減少する。 2000/01年度は、堅調な国内価格を反映して、小麦や大麦の作付面積が増加する。 また中期的な穀物の作付面積は、羊経営との収益性比較(特に小麦)や塩害、土 壌浸食、生産性の向上、さらには遺伝子組み換え作物の状況が影響を及ぼす。飼 料作物の生産量は、大麦を中心に2001/02年度(963万トン)に高水準となるが、 2002/03年度には5.8%減少し、その後緩やかに回復基調となる。また穀物価格 は、短期的に上昇するが、中期的には変化がないものとみられる。 豪州における飼料穀物の需給予測 資料:ABARE 注1:99/2000および「2000/01年度は見込値、それ以降は予測値 2:大麦、エン麦の年度は12〜11月、ソルガムは3〜2月
EUでは、UR農業合意および中・東欧諸国との農畜産物に関する貿易合意によ り、域内への農産物の輸入量増加が見込まれる中で、特定品目について生産力を 強化しようとする動きがある。また、農業に対する支援策も、次期ラウンド交渉 により、削減を迫られるものと予想されている。域内の需給バランスの均等化が EUの農業政策の基本にあるだけに、今後、生産に影響を与えるさまざまな動向を 引き続き注視していく必要があろう。なお、今回の報告書では、2000年10月以降 に発生したBSEの再燃や口蹄疫については前述のとおり勘案されてはいない。こ のため、短期予測においては、かなりの狂いが生じると思われるが、中・長期予 測では、おおまかな畜産物の需給状況が把握できると思われる。 一方、飼料穀物については、米国、豪州のいずれもが、主要な産出国であるだ けに、両国の生産動向が世界の畜産に与える影響は計り知れないものとなってい る。特に米国の飼料用穀物貿易は、世界の穀物取引の5割強を占めるといわれて いる。今後、世界各国での畜産物需要が拡大する中で、飼料用穀物に対する依存 度はますます重みを増してくるだけに、両国の動向について注目していく必要が ある。
元のページに戻る