EU委員会、家畜の輸送環境に関する規則強化を提案
輸送車内の温度および湿度の記録を義務付け
EU委員会は4月9日、家畜の輸送について、動物福祉の観点から輸送環境の改
善を柱とする提案を行った。この提案は、現行の家畜輸送車に関する規則(理事
会規則98/411/EC)を強化するもので、牛、ヤギ、羊、豚などを連続して8時
間以上輸送する場合、輸送車内の温度および湿度を適切な換気などにより管理す
ることを求めている。また、湿度および温度の記録・警報装置の設置が新たに義
務付けられた。これらの条件は、家畜衛生および動物福祉に関する科学委員会の
助言に基づいて設定されたものである。
新規輸送車については来年の1月から実施の予定
今回の提案による新たな規則制定により、家畜輸送コストの上昇は3〜5%程
度になるとみられる。ただし、換気による車内環境の改善により、輸送中に死亡
する家畜の減少などが見込まれるため、結果として、経済性の悪化にはつながら
ないものと期待されている。この提案が農相理事会で採択された場合、新規の輸
送車は来年1月1日から、既存の輸送車は遅くとも2003年12月31日までに、新た
な規則を順守することが求められる。家畜も対象として含めた動物福祉の問題は、
日本ではそれほど注目されてはいないが、EUでは、畜産物生産に供する家畜とい
えども、苦痛などを感じる生物であるとの認識が一般に浸透している。このため、
農場における家畜の飼養条件のみならず、輸送時における環境、と畜方法に至る
まで、動物福祉の観点からの見直しが進められている。
輸送時における動物の保護は、今後も重要な検討課題
輸送時における動物の保護の問題は、動物福祉の中でも重要な検討課題として
位置付けられており、EU委員会では、今回の提案のほか、動物の輸送全般に関す
る規則(理事会指令91/628/EEC)の改正についても、今年中に提案する予定で
ある。また、家畜衛生および動物福祉に関する科学委員会は、2001年末を目途に、
輸送中の動物の保護に関する勧告の策定を進めている。勧告の策定作業の中では、
輸送車の積載密度や輸送時間に焦点が当てられており、勧告公表後には、これら
の点に関しても、さらなる見直しについて論議が進められるものとみられる。
EU委員会の提案要旨
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