鶏卵供給過剰、早急な対策が必要(マレーシア)


大幅な供給過剰で深刻な経営危機の恐れも

 マレーシア畜産農家協会連合(FLFAM)によると、マレーシアの鶏卵の供給は、
今年3月以降、輸出需要を割り引いても大幅な過剰となっている。政府は、生産
者価格の上限を統制価格として定めているだけで、価格低落時の支持対策は講じ
ていない。このためFLFAMは、飼養羽数を削減するなどの自主対策を早急に講じ
なければ、中小規模の家族経営が中心となっている同国の養鶏場は、深刻な経営
危機に陥る恐れがあるとしている。


相次ぐ大規模鶏舎建設が背景、対応策は成鶏の減羽のみ

 今回、FLFAMが供給過剰対策の必要性を表明した背景には、鶏卵の生産者出荷
価格が今年3月以降、政府の統制価格である1個当たり0.23リンギ(約7.5円:
1リンギ=32.5円)を大幅に下回り、さらには中小規模生産者の推定生産コスト
である0.145〜0.155リンギ(約4.7〜5円)をも下回って推移しているという状況
への危機感がある。FLFAMは、このような供給過剰の要因として、飼料会社を中
心とした大企業が、全自動式の大規模な閉鎖鶏舎を相次いで建設したことがある
としている。

 FLFAMの提案では、生産者自らが成鶏を対象とした減羽を行い、初生びなの購
入を手控える以外に現状を打開する方策はないとしている。同国の初生びなは、
そのほとんどが国内に11ヵ所あるふ化場から調達されている。初生びなの価格は、
鶏卵の需給状況にも影響されるが、おおむね1羽当たり1.8〜2.2リンギ(約58.5
〜71.5円)で推移している。


4月中旬現在も価格は低迷

 現在、マレーシアには362戸の養鶏場があり、約2,100万羽の採卵鶏が飼養さ
れている。最大の生産地は、同国の首都であるクアラルンプールと隣国シンガポ
ールとのほぼ中間に位置するマラッカ州となっている。2001年3月現在の1日当
たりの鶏卵生産量は、約1,700万個に達していると推計されており、99年の生産量
である約1,500万個を10%以上上回っているものとみられている。同国の年間1人
当たりの鶏卵消費量(推計)は約360個、自給率は100%を超えており、年間生産
量の約9%に相当する5億6千万個が輸出されている。輸出鶏卵の大半は、隣国シ
ンガポール向けであり、ごく少量がインドネシアに向けられている。輸入につい
ては、年間300トン程度が冷凍液卵あるいは粉末の形でタイから輸入されているの
みである。

 なお、4月11日現在の鶏卵の卸売価格は0.16リンギ(約5.2円)、小売価格は
0.18リンギ(約5.9円)となっており、FLFAMの緊急提案にもかかわらず、生産者
価格は依然としてコスト割れ、あるいは、コストとほぼ同水準で推移している可
能性が高い。

 減羽により需給状況が改善され、鶏卵価格が落ち着くのか、あるいは、中小規
模の養鶏場がとう汰され、大手の寡占による生産・流通の再編が行われるのか、
今後の動向が注目される。

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