ブッシュ米大統領、2002年度予算案を発表
USDA予算案は緊急対策分を除くと前年度より増額
ブッシュ米大統領は4月9日、総額約1兆9,600億ドル(約245兆円:1ドル=
125円。対前年度5.7%増)に上る2002年度(2001年10月〜2002年9月)の予算案
(予算教書)を議会に提出した。これは、今後10年間における約5兆6,400億ド
ル(約705兆円)もの財政黒字の発生を前提とした10ヵ年プランに基づくもので
あり、その中には約1兆6千億ドル(約202兆円)の減税案も含まれている。
このうち、米農務省(USDA)予算案の総額は、約633億ドル(約7兆9千億円)
と、緊急農家支援策により増額された2001年度予算額に比べ、約9%の減少とな
っている。ただし、緊急農家支援策を除いた通常予算ベースでは約6億ドル(約
750億円)の増額である。
動植物検疫措置の強化などに重点配分
今回の予算案の重点事項としては、動植物検疫措置の強化、食品の安全性確保
および農産物の貿易拡大のための施策などが挙げられている。
−動植物検疫措置の強化−
動植物検査局(APHIS)の予算額が約8億5千万ドル(約1,060億円)と、前年
度より約1億8千万ドル(約220億円)も増額されている。これには、口蹄疫や
牛海綿状脳症(BSE)をはじめとする家畜伝染性疾病の侵入防止を図るための農
業検疫検査プログラムの拡充や、主要な港や空港に配置される検査官や獣医師な
どを約350人増員するために3,200万ドル(約40億円)を充てることなどが盛り込
まれている。また、農業研究局(ARS)には、BSEの侵入防止のため、約500万ド
ル(約6億3千万円)の研究予算が特別に振り向けられることとされている。ベ
ネマン農務長官は、「われわれは、病害虫や疾病の防疫システムを強化するため、
必要なプログラムについての評価を継続し、あらゆる可能な措置を講じていく必
要がある」との立場を強調した。
−食品の安全性確保−
食品安全検査局(FSIS)の予算額を、前年度比約3%増の約7億2千万ドル
(約900億円)とし、約7,600人の食肉・食鳥検査官などを擁する連邦および州政
府の食品検査プログラムなどの強化を図ることとしている。
ベネマン長官は4月18日、ワシントンDCで開催された食品安全性サミット会
議でのスピーチにおいて、USDAが取り組むべき6つの食品安全性に関する優先
事項を示し、食品の安全性にかける意気込みの一端を披露している。
1.過去数十年間における食品の生産から消費をめぐる状況の基本的な変化を十
分理解することによって、個々に関連し合う食品産業の各分野に有効に機能す
る政策を講じること
2.すべての食品安全性に関する政策を、正当と認められる科学的根拠に基づい
たものとして確実に実行していくこと
3.USDAが行う検査から消費者の食品の取り扱いに至るまで、あらゆる食品安
全性の局面について、一般市民に対する教育を引き続き実施していくこと(清
潔、区別、加熱調理、冷蔵の4つを食品安全性の基本ルールとして広める
「Fight BAC!」キャンペーンは、民間の協力を得ながら取り組まれた成功例)
4.食品安全性に関する政策決定過程をこれまで同様に透明化し、一般市民が関
与する機会を与えること
5.官民共同による取り組みを進めること
6.関係省庁との協力を強化していくこと
−農産物の貿易拡大−
海外農業局(FAS)について、高度な貿易問題に対処するための人材の充実を
図るとともに、輸出信用保証プログラムの拡充(約39億ドル、対前年度約3%増)
などを含んだ増額予算となっている。この中で、乳製品の補助金付き輸出を図る
ための乳製品輸出奨励計画(DEIP)については、約4,200万ドル(約53億円)が
見込まれている。これは、前年度比約24%の増額であるが、2000年度以前までの
水準からは下回ったものとなっている。その理由として、USDAは、脱脂粉乳に
対する輸出補助金の交付額が、国際相場の上昇により、99年の1トン当たり1,0
40ドルから、2001年度当初5ヵ月では同60ドルにまで減額していることなどを挙
げている。
加工原料乳価格支持制度は2001年末で廃止
なお、これまで2年間にわたって実施期間が延長されてきた加工原料乳価格支
持制度の扱いについては、今年12月末をもって廃止されることを前提とした予算
案が組まれている。
議会では、5月10日に予算決議案が承認され、大統領案よりも圧縮された11年
間で総額1兆3,500億ドル(約169兆円)の減税が盛り込まれた。農業関係では、
2001年度55億ドル(約6,900億円)、2002年度73億5千万ドル(約9,200億円)の
追加的支出に加え、2003〜2011年の間の農家支援プログラムに備えた上限額661
億5千万ドル(約8兆3千億円)の留保資金(reserve fund)を設けることなど
が承認された。今後、各委員会における歳出予算法案の作成プロセスを通じ、具
体的な予算案の審議が本格化する。
元のページに戻る