◇絵でみる需給動向◇
ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2000年におけるEU15ヵ国の牛 肉生産量(枝肉重量ベース、子牛肉を含む)は、前年比1.5%減の760万6千トン となった。EUの牛肉生産は、96年に発生した牛海綿状脳症(BSE)問題による牛 肉消費の低迷や、生乳生産割当の実施に伴う乳用経産牛の飼養頭数減少などを背 景として、91年の873万トン(12ヵ国)をピークに減少傾向で推移していた。し かしながら、99年の生産量は、牛肉消費の回復や価格の上昇などから、わずかな がらも前年を上回った。2000年については、当初、前年を上回る生産水準を維持 していたが、10月に発生したBSE問題の再燃により生産が大幅に減少したため、 年間生産量も再び減少に転じる結果となった。 ◇図:EU15ヶ国の牛肉生産量◇
2000年の生産動向を見ると、上半期の牛肉生産は、域内経済の安定的な成長を 背景とした牛肉需給の回復、牛肉価格の上昇が牛肉生産を刺激した結果、前年同 期比1.1%増と順調な滑り出しをみせた。一方、下半期については、前半こそ上半 期同様、増加傾向での推移となったが、10月末にフランスで発生したBSE問題の 再燃を皮切りに、域内各国にBSE問題への懸念が急速に広まった結果、消費不振 とそれに伴う価格の暴落を招き、イギリスなどを除く域内の牛肉生産は大きく減 少した。過去に発生事例のなかったドイツやスペインで相次ぎ発生が確認される など、BSEの発生件数が各国で増加するにつれ、消費者の牛肉に対する不安感は 増幅し、牛肉離れを加速させた。BSE問題の拡大が年末の需要期でもあったこと の影響も大きかった。 主要国別牛肉生産量 資料:ZMP 注1:枝肉ベース、子牛肉を含む 注2:2000年は速報値
このような中、EU委員会は3月26日、今年2月までにEU各国で実施されたBSE検 査結果を公表した。今年から健康な(臨床症状の認められない)牛も対象とした モニタリング検査が義務付けられており、2月までに感染(陽性)が確認された 頭数は265頭を記録した。今後、検査実施対象が拡大するにつれ、イギリスを除 き各国とも確認頭数が昨年を上回るペースとなるのは確実とみられている。フラ ンスなど一部加盟国では牛肉消費がわずかながらも上向きを見せつつあるが、ド イツなど多くの国では、いまだ消費回復の兆しは見えていない。昨今の口蹄疫問 題も食肉に対する消費者の不安感を増幅させており、価格低迷の続く中で生産回 復の足がかりが見えない状況にある。
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