◇絵でみる需給動向◇
タイ農業協同組合省が発表した2000年12月のブロイラー生産量は、前年同月比 10.3%増の7,800万羽となった。2000年のブロイラー生産は、99年後半に卸売価格 (バンコク、生体)が低迷した影響で、年初から夏場にかけて前年をほぼ下回っ て推移したものの、年後半からの欧州向けを中心とした好調な輸出を反映し、20 00年9月以降、4ヵ月連続で前年を上回る好調な生産が続いている。 なお、近年、輸出が大きく伸びている鶏肉調製品の生産量も、ブロイラー生産 量と同様に9月以降は前年を上回って推移しており、2000年12月の生産量は、前 年比10.3%増の8万8千トンとなっている。 ◇図:鶏肉調製品生産量◇
生産増を促してきた要因の1つとして、特に欧州への輸出の増加が挙げられる。 99年の欧州への鶏肉輸出量は7万7千トンで、1位の日本向け輸出(16万3千トン) の半分以下であった。しかし、2000年は、年初から欧州向け輸出のほとんどを占 めるドイツ、オランダおよびイギリス向けが増加傾向にあったことに加えて、後 半に顕在化した牛海綿状脳症(BSE)の影響による牛肉離れから、EUでは輸入鶏 肉の需要が高まったと言われている。2000年の欧州向け輸出量は10万5千トンと なり、日本向け(17万9千トン)の6割に迫る数量に達している。さらに欧州では、 現在、猛威を振るっている口蹄疫の影響で牛肉、豚肉離れが一層進むことも考え られ、関係者の間では、将来的に欧州向け輸出が日本向けと肩を並べるほど増加 するのではないかとの見方もされ始めている。 また、形態別に見ると、タイの高い技術力が有利とされる鶏肉調製品の輸出の 伸び率が、冷凍鶏肉をしのぐ傾向が続いている。近年では、輸出先において、調 製品を中心にタイ産鶏肉の品質が見直されつつあるとも言われ、最近の輸出増に 大きく寄与しているものと思われる。 ◇図:鶏肉の地域別輸出量◇
こうした輸出の増加を受け、ブロイラー生産者は増産体制を整えつつある。欧 州向けの3月の輸出価格が前年同月比17.4%高の1トン当たり2,700ドル(約33万8 千円:1ドル=125円)と高騰していることもあり、ある大手のインテグレーター は、現在のブロイラーの出荷羽数を、前年の同じ時期と比較して11%多い1週間 当たり2千万羽に増やしているという。また、輸出全体に占める割合を減じてい るとはいえ、いまだに第1位の輸出市場である日本のし好をにらんで無農薬飼料 を使用するなど、健康志向に着目した生産に力を注ぐインテグレーターも現れて おり、輸出の増加は生産の手法にも影響を及ぼしつつあると言える。 今後、BSE、口蹄疫などの大きな被害にさらされている欧州への鶏肉輸出はま すます増加するものと思われ、農業協同組合省では、今がタイの鶏肉輸出を大き く伸ばす好機として、欧州が求める衛生条件や飼養管理の順守の徹底を広く呼び かけている。
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