◇絵でみる需給動向◇
回復傾向を見せていたEU域内のバター価格は、需要の減退と輸出の不振により、 伸び悩みをみせている。指標価格の1つであるオランダのブランドバター価格は、 2001年3月が1s当たり6.80ギルダー(約354円:1ギルダー=約52円)と、前年お よび前々年同月を上回っているものの、依然として低い水準にある。昨年は、業 務用向けを中心とする需要の回復や原油価格の上昇による北アフリカ、中東諸国 の需要が高まったことから価格は回復傾向を見せていたが、季節的な増産時期を 迎えたことなどから、需給は弱含みとなり価格は低迷している。
EUでは、昨年に続き3月15日から、夏期の余剰と冬期の不足を調整することを 目的とする民間在庫補助制度(APS)が開始された。これにより余剰バターの多 くがAPSによる保管対象になるものと見込まれ、今後、域内のバター需給は多少 なりとも引き締まるものとみられている。このため、価格については、大きな変 動はないものの底値を脱出するとの見方も出ており、低迷するバター市場にとっ て明るい材料となっている。 一方、輸出に関しては、他の輸出国との競争が厳しさを増す中で、イギリスで の口蹄疫問題の発生が大きな影響を及ぼしており、口蹄疫問題解決のめどが立た ない限り、当面、大きな改善が見込めない状況にある。 EUのバター需給動向 資料:ZMP 注:数値は暫定値および予測値
現在、域内のバター価格は、多くの加盟国で介入買入れの発動基準である介入 価格の92%を上回っており、数ヵ国では入札による介入買入れがすでに実施され ている。域内の介入在庫量は、99年夏以降に急増し、2000年5月には前年同月比 740%となる8万4千トンを記録している。その後、若干減少傾向を示したもの の、2001年3月には前年同月比93%の6万5千トンと、在庫量は依然として高水 準となっている。当面の在庫見通しについては、生産が昨年来からの好調なチー ズ需要を受けて減少傾向にあるが、消費の減退や輸出不振による余剰分が在庫に 向かうと懸念されている。EU委員会では、脂肪分を敬遠するし好の変化から消費 は減少すると予測しており、必然的に在庫の積み増しは避けられない状況にある とみている。 ◇図:バターの在庫量と価格の推移◇
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