EU委員会、植物性たんぱく飼料の調達に不安なしと報告
植物性たんぱく飼料の世界的供給量は十分
EUでは、今年1月から牛海綿状脳症(BSE)対策の一環として、消費者の不安
を解消するため反すう動物以外の家畜に対しても、肉骨粉など動物性飼料(PA
P: Processed Animal Protein)の給与が全面的に禁止された。EU委員会は
3月19日、これにより見込まれる植物性たんぱく飼料の代替需要増加への対応の
必要性についての見解を明らかにした。この中で、大豆かすなど植物性たんぱく
飼料の世界的供給量は十分で、需要増は容易に輸入・調達できるとする一方、EU
域内で油糧種子などの増産を進めることについては、多くの費用がかかるなどさ
まざまな問題があると指摘した。
動物性飼料の禁止措置に対応した新たな補助は不要
EU委員会が明らかにした見解の概要は次の通りである。
PAPを植物性たんぱく飼料に置き換えることについて、大きな問題はない。当
面の主な代替飼料は、穀物と大豆かすであろう。PAPの飼料利用禁止措置が、EU
または世界におけるたんぱくの不足を引き起こすことにはならないだろう。すな
わち、不足分は、域内産穀物および輸入大豆かすならびに飼料の効率的利用によ
って賄うことが可能と見込まれる。特に、代替飼料として最適な大豆かすの需要
増加量は、100〜150万トンで現在の輸入量の約5%相当にすぎないものと見込ま
れ、容易に輸入できるものと考えられる。
長期的な視点で、もし、別の理由(世界的な需要増や供給減)で不足する事態
になれば、価格が上がり、それがインセンティブになり、EU内外において増産
を刺激するものと思われる。しかしながら短期的に見れば、油かすは広く入手可
能であり、価格は上昇するよりむしろ低下すると見込まれる。従って、PAPの禁
止措置によって、EU域内で植物性たんぱく増産のための新たな補助またはより多
くの補助を行わなければならない状況にはない。
EU域内での増産は現実的ではないとの見解
短・中期的(今後2〜5年間)にEU域内で植物性たんぱくを増産する方策と
して次の選択肢があるが、いずれも問題があるため、現実的でない。
1)油糧種子の増産(特定油糧種子作物の補助政策を維持し、油糧種子生産地域
を拡大するのに魅力的な水準に補助金を固定する)
・輸入大豆かすに比べ、かなり費用高である。
・油糧種子作付面積は(米国との)ブレアハウス合意で制限されている。
・より市場指向のための補助金引き下げというアジェンダ2000改革の重要要素を
事実上反故にするものである。
・既に生産を行っている油糧種子生産者に対しても、アジェンダ2000改革以上の
経済的補助を与えることになる。
2)たんぱく作物(エンドウ、インゲン、ルピナスなど)の増産(特定作物に対
する補助金の増額)
・費用対効果の点で効率的でない。
・既に生産を行っている作物生産者に対しても、さらに経済的補助を与えること
になる。
・たんぱく作物の増産は、特別な環境的配慮をしないと、農地への硝酸塩の浸出
増加、ひいては水質汚染を引き起こす。
3)たんぱく高含有作物生産へのセット・アサイド(休耕地など)の利用承認
・セット・アサイドは穀物生産の需要への調整機能を有しており、その利用は機
能低下を招く。
・セット・アサイドは耕種作物の生産制限という重要な役割を持っており、作物
生産への活用は、世界貿易機関(WTO)の青の政策(ブルーボックス)要件の
放棄につながる。
4)乾燥飼料(dried fodder)の増産
・乾燥飼料は主に牛用で、(今回新たに必要な)豚・鶏用飼料に適さない。
・乾燥には通常燃料が必要であるなど、環境にやさしくないという議論がある。
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