アルゼンチン、パンパでの口蹄疫発生を確認


3月16日、OIEに口蹄疫の発生を通知

 3月16日、アルゼンチン家畜衛生当局は、国際獣疫事務局(OIE)に対し、パ
ンパ地域で口蹄疫の発生を確認したことを通知した。

 OIEが受けた通知によると、ブエノスアイレス州リバダビア郡、コルドバ州ウ
ニオン郡、ラパンパ州チャパレイフ郡、サンタフェ州ヘネラルロペス郡、サンル
イス州ゴベルナドールデプイ郡にそれぞれ1件の口蹄疫の発生が確認され、乳牛
と1歳齢以上の雄牛7,106頭に感染する危険があり、うち450頭に臨床症状が出て
いる。これらの郡はワクチン接種措置を取る制限ゾーン(「海外駐在員情報」平
成13年3月6日号(通巻第474号)参照)およびその周辺の郡で肉牛肥育の盛んな
パンパ中心部に当たる。また同通知では、農畜産品衛生事業団(セナサ)が実施
した酵素免疫測定(ELISA)法の検査でウイルスは血清型Aと特定されたとしてい
る。発生源特定のための疫学的調査は継続中で、ワクチン接種措置を取るため家
畜のと畜処分は行っていない。

 4月3日現在のOIEの公表によると、発生件数は5つの州で149件となり、臨床症
状の見られる牛は4,932頭、感染する危険がある牛は11万6,324頭に拡大している。


各国の輸入規制措置で国内食肉業界に大きな影響を懸念

 この通知に先立ち、同国家畜衛生当局は、米国、カナダ、チリなど主な輸出先
国向けの食肉輸出許可書の発行を3月12日から一時的に停止した。 

 またEUは3月13日、イギリスに端を発した口蹄疫が拡大感染する懸念から、従
来の衛生条件付きの食肉輸入措置を取らず、アルゼンチンから偶蹄類動物由来の
畜産物などの輸入を4月15日まで禁止した。

 この結果、先のブラジルへの食肉輸出制限を合わせると、牛肉輸出量の約8割
を占めるNAFTA、EUおよびメルコスルの3大市場を失ったこととなる。

 アルゼンチンの食肉業界は今回の事態に対し、残った市場のイスラエル、新規
市場のロシアとアルジェリア、香港などの対応を見守っていたが、4月現在アル
ゼンチンが輸出できるのは香港のみとなっている。現地の報道では、今回の件で
年間約2億5千万ドル(約313億円:1ドル=125円)以上の損失と約5千人の失
業者が出るとしている。


行政府の機構改革とあいまって、政府の対応に遅れ

 事態をさらに悪化させたのは、省庁の機構改革実施と今回の口蹄疫問題の表面
化が重なり、責任者不在の下で国内畜産界に混乱が広がったことである。

 国内経済建て直しのため新たに経済省大臣に任命されたロペス・ムルフィ元国
防省大臣は、経済省内の機構改革を行い、いったん農牧水産食糧庁を副庁に格下
げした。この結果、農牧水産食糧庁のベロンガライ長官とセナサのマチネア総裁
は辞表を提出した。

 ところが、急激な機構改革と財政緊縮策を打ち出したムルフィ経済大臣は、反
対派により辞任に追い込まれ、91年の兌換(だかん)法の立役者ドミンゴ・カバ
ロ元経済大臣が復帰した。カバロ経済大臣により機構改革が再度見直され、当面
農牧水産食糧庁の格下げはなくなり、長官に元農牧庁長官だったマルセロ・レグ
ナ氏が任命された。またセナサ総裁の後任にはベルネルド・カネ氏が任命された。

 家畜衛生当局は、3月中旬から遂次、口蹄疫の発生件数と発生頭数を発表して
いたが、4月に入り国際獣疫事務局(OIE)への報告をもって公式発表に代える
方針に変更したようである。

 現在、疫学的調査を進めているようだが、発生源は明らかになっていない。業
界は、経費と労力が膨大に費やされる過剰防衛的な家畜の殺処分はこの国にはそ
ぐわないとしながらも、パンパの中心で発生した口蹄疫禍の成り行きに大きな不
安を抱いている。

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