ベトナム、豚肉の生産と輸出を振興
政府は10年間で生産を倍増、輸出は12倍を目指す
ベトナム農業・農村開発省(MARD)は、昨年約1万2千トンだった豚肉の輸
出を、2005年までに7万トン、2010年には14万トンにまで伸ばすことを目標とし
て、家畜生産・輸出ユニオンの活動を強化する方針を表明した。この目標を達成
するため、MARDでは、香港やロシアなど、ベトナムの伝統的市場のほかに、ア
ジア市場への輸出を拡大していきたいとしている。
豚は、ベトナムの畜産にとって最も重要な家畜であり、大規模な養豚場以外で
も、ほとんどの農家で3〜4頭程度が飼養され、小規模農家にとっては貴重な現
金収入源となっている。2000年の同国の豚飼養頭数は約1,950万頭であったが、M
ARDでは、これを2001年に2千万頭、2005年に2,400万頭、2010年には3千万頭に
まで増頭したい意向である。また、豚肉生産量についても、2000年に約142万ト
ンであったものを、2005年に200万トン、2010年には300万トンまで増大させたい
としている。
豚肉生産の増大のため輸出を振興
MARDでは、このような豚肉生産量の増大を図るためには、国内消費の拡大も
さることながら、何よりも輸出振興が不可欠であるとしている。2000年の同国の
豚肉輸出量は1万2,200トンであり、輸出相手国は香港(8千トン)、中国(2
千トン)、ロシア(1,500トン)などとなっている。MARDでは、2001年の輸出目
標をほぼ倍増の2万3千トンとしているが、今年に入って越露間で合意された新
たな支払方法の導入により、ロシア向けの輸出数量が1〜2万トン増加すると見
込まれることから、目標は達成し得るとしている。また、シンガポールも、2010
年までには、同国の国内消費量の10〜20%に相当する約2万トンの豚肉をベトナ
ムから輸入したい意向と伝えられており、MARDでは大幅な輸出需要の増加を見
込んでいる。
肉質改良や加工処理施設の拡充などの課題も
ところで、ベトナムの豚、特に旧北ベトナム地域のものは、多産ではあるが脂
肪の多いモンカイ種という在来種の血を引くものが多いため、その肉は脂肪の含
有量が高く、国際的な取引基準とされる赤肉割合53〜57%を下回るものが大半で
ある。このため、輸出基準を満たす豚肉は、国内生産量の約6%程度にすぎない。
豚肉の市場価格は、国内市場については、部位や脂肪の量にかかわりなく1s
当たり約1万8,200ドン(約144円:1千ドン=約7.9円)となっており、このこと
が赤肉割合の高い豚肉生産を推進する大きな障害の1つとなっている。これに対
し、輸出価格(FOBベース)は2万2,600ドン(約179円)と、国内市場向けのも
のよりも約24%高くなっていることから、このことが肉質改善のインセンティブ
になるとみられている。
また、国内には輸出基準を満たす加工処理施設が22ヵ所(うち3ヵ所がベトナ
ム畜産公社(VINALIVESCO)のもので、年間1万トンを処理)しかなく、早急な
拡充が必要とされている。この点について、MARDでは育種改良、飼養管理技術
の改善によって、同国の豚の肉質改良を行うとともに、国内外の資本誘致によっ
て加工処理施設の改善を行い、輸出競争力を高めていきたい考えである。
ベトナムでは、ドイモイ(刷新)政策の導入により、国営企業の民営化など大
幅な体制改革が行われており、畜産分野でも、97年に国営企業55社が統合され、
VINALIVESCOが設立された(現在、傘下36社)。生産振興のための土地利用税の
免税措置など、投資促進策はとられているものの、頻繁な制度改正など外資が参
入しにくい面が多く、MARDや VINALIVESCOが今後どのように増産を図っていけ
るのか、その手腕が注目される。
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