USDA、BSE問題で隔離されていた羊を移動


TSE感染の懸念から欧州産輸入羊を移動

 米農務省(USDA)は3月21日、98年以降隔離されていたベルギーおよびオラ
ンダ産の輸入羊のうち、233頭をバーモント州の飼養農家からアイオワ州エイム
ズにある同省の全国獣医サービス研究所へ移動したことを発表した。これらの羊
については、同研究所において処分されるとともに、組織のサンプルが研究用に
採取されることとなっている。

 これらの羊は、96年に輸入されて以来、USDAのスクレイピー防止対策の一環
として、連邦政府から一定の規制を受けてきた。さらに98年には、牛海綿状脳症
(BSE)に汚染された動物性飼料を摂取したとの懸念が生じたため、同省の要請
により、バーモント州政府は、これらの羊を隔離するとともに、と畜および販売
を禁止するなどの措置を講じた。

 2000年7月10日には、これらの羊のうち、数頭に伝達性海綿状脳症(TSE)の
陽性結果が出たことから、USDAは同月14日、特別緊急事態を宣言し、これらの
羊群を処分することを決定した。なお、TSEはBSEやスクレイピーなどの一連の脳
症を総称する表現であるが、USDAによれば、現在の検査手法では、これらの羊
がBSEまたは羊やヤギに特有なスクレイピーのいずれかに罹患(りかん)してい
るかを特定することは困難であるとされ、こうした表現が使用されている。スク
レイピーの場合、BSEと異なり、人間の健康に悪影響を与える可能性については
報告されていない。


羊飼養農家との訴訟でUSDAの処分実行に大幅な遅れ

 羊の処分に関しては、その保有者に対して、適正な市場価格での補償が行われ
るものの、羊の飼養農家は、USDAの処分決定に対して、所有する羊は健康であ
り、USDAの検査は不十分であるとして、その無効を求めて、訴訟を起こした。
しかし、原告側は今年2月、米連邦地方裁判所で敗訴し、上訴した米連邦巡回控
訴裁判所においても、4月に審理を開催することは認められたものの、USDAの
決定差し止めは棄却された。こうした経緯で、USDAによる一連の措置が大幅に
遅れたこともあり、報道によれば、3月13日にUSDA側から羊飼養農家の弁護士
に対して、裁判所の結審を待たずに、羊の処分を実行に移すことを伝えていたも
のとみられる。

 さらに、3月23日には、別の飼養農家が保有し、隔離されていた126頭の羊につ
いても、同様に移動されたことが報じられている。


官民挙げて防疫への積極的な取り組み

 USDA動植物衛生検査局(APHIS)のリード局長は、今回の発表に際して、羊
の所有者に対して同情の意を示すとともに、これらの羊が米国全体の家畜衛生
に与える脅威を考慮すると、USDAはこのような断固とした手段を取らざるを得
ないと、BSEなどの防疫に向けた強い決意を改めて示した。

 このように、USDAが防疫に対して断固たる姿勢を取る一方、業界においても、
アメリカ食肉協会(AMI)が3月23日、BSEについての正しい理解を促進し、米国
産牛肉に対する消費者の信頼を高めるためセミナーを主催するなど、BSEの国
内への侵入防止に向けて積極的な取り組みを行っている。

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