米国における濃縮乳たんぱくの輸入問題


この10年で輸入が急増

 米会計検査院(GAO)は3月5日、膜処理(ultra-filtration)による濃縮乳
たんぱくに関する報告書を公表した。これは、その輸入急増を懸念する国内生産
者の意向を受けたウィスコンシンなどの酪農関係州選出議員6名からの調査要請
に基づくものである。

 膜処理による濃縮乳たんぱくとは、浸透膜を用いて、生乳から乳糖や水分など
を除去したものであり、主に、乳たんぱくや乳脂肪から成る。米国の関税規則上
は、「ホエイ・その他のもの」の中の「濃縮乳たんぱく」(milk protein concen-
trates:関税番号0404.90.10)に分類されており、たんぱく質含有率で40〜90%の
ものがこれに該当する。このため、報告書は、問題となっている膜処理による濃
縮乳たんぱくの輸入が、濃縮乳たんぱくというくくりでしか把握できないとしつ
つ、下表のとおり、その輸入量が90年の805トンから99年の44,878トン(生乳換
算で、全米の生乳生産量の0.8〜1.8%程度に相当)まで急増していることを指摘
している。99年における上位6ヵ国からの輸入量は、全体の約95%を占めており、
うち、ニュージーランド(NZ)および豪州産がすべて膜処理による粉末状の濃
縮乳たんぱくである一方、カナダ産は、すべて濃縮乳たんぱくと脱脂粉乳の混合
粉末の形態で輸入されているとしている。


低税率下の輸入かつ幅広い用途

 濃縮乳たんぱくには、現在、関税割当制度の対象とされている脱脂粉乳(たん
ぱく質含有率40%未満)とは異なり、1kg当たり0.37セント(約0.46円:1ドル
=125円)という低水準の従量税が課せられているだけである(カナダ産につい
ては、北米自由貿易協定により無税扱い)。このため、主に脱脂粉乳の代替品と
して、ピザ用など一部のチーズの製造工程において、生乳の成分調整のために用
いられるほか、ソフト乳製品、パン、菓子、栄養食品などの原料としても使用さ
れているとしている。


生産者団体は関税分類の見直しなどを要求

 全国生乳生産者連盟(NMPF)は、「現行の関税規則は、抜け穴だらけである」
として、昨年からこの問題を提起してきた。今回のGAO報告を追い風に、NMPF
は4月10日、この問題についての政府、議会に対する行動計画を明らかにし、関
税分類の見直しや国際貿易委員会による輸入実態調査などを求めていくこととし
ている。また、前述の酪農関係議員らは、ナチュラル・チーズ製造用として膜処
理による粉末状の濃縮乳たんぱく(注:液状のものは、国産生乳が原料)の使用
を禁止するための、上下両院に提出済みの「クオリティー・チーズ法案」の制定
に向け、全力を尽くしていくと述べるなど、本件をめぐる動きが、今後さらに活
発化するものと予想される。

米国における濃縮乳たんぱくの輸入量の推移(単位:千トン)
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