米国産牛肉の軟らかさが向上


90年より軟らかさが約2割向上

 「牛肉の軟らかさに関する全国調査」は、肉牛生産者などから徴収されるチェ
ックオフ資金を原資として、テキサスA&M大学、ペンシルベニア州立大学など
の研究者により、ニューヨーク、シカゴ、ロサンジェルスなど、全米主要8都市
の小売店およびレストランでサンプリングされたステーキ用などの牛肉を対象と
して、98年から99年にかけて実施された。

 牛肉の軟らかさを測定する方法としては、一定の厚さの牛肉を切断するために
必要な力を重量で示すWarner-Bratzler Shear Force(WBSF)法とトレーニン
グを受けた検査員グループによる実際の食感に基づく方法が用いられた。

 この調査の結果、90年に行った調査との比較において、リブアイロールで17%、
トップサーロインで19%、チャックロールで21%、トップラウンドで31%、それ
ぞれ軟らかさが向上したことが明らかとなった。

WBSF法による軟らかさの比較
wbsf.gif (16169 バイト)
 資料:「1999 National Beef Tenderness Survey」


枝肉冷却や熟成の長期化などが要因

 こうした結果について、調査に当たった研究者は、90年代の初め以降、@食肉
加工処理業者(パッカー)が以前に比べて、より長い時間をかけて枝肉を冷却す
るようになったこと(短時間での急速な冷却は肉を硬くすると言われる)、A小
売およびレストラン向け納品においても軟らかさを増すための熟成期間がより長
くなっていること、B調査の対象となった牛肉に、品質等級のチョイス以上のも
のがより多く含まれていたことなどを挙げている。なお、トップサーロインにつ
いては、全米肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)の働き掛けで、生体の当該部分
への注射(injection)が減ったため、これによる損傷と肉質硬化の程度が緩和され
たことも要因の1つと考えられるとしている。

 この調査を統括するNCBAの商品向上小委員会のニコルス議長は、今回の調査
結果について「肉牛生産者が消費者主導の業界となるべく真剣に行動しているこ
とのあかしである。軟らかさは消費者にとって、その満足度を左右する最も重要
な要素の1つであり、NCBAはこの問題の改善につき、DNAテストの実施、遺伝
形質の向上などに努めてきた」と述べている。


長期低迷から脱するための品質問題取り組みの一環

 牛肉業界では70年代をピークに約20年間に及ぶ需要低迷を経験し、90年代の初
めにようやく牛肉が直面する品質問題への取り組みを始めた。牛肉の軟らかさに
関する調査もその一環として、今後の取り組みのベースラインとなる情報提供を
目的として90年に実施されたものである。

 この調査の結果、肩およびモモの部位だけではなく、トップサーロインについ
て、販売上好ましくない硬さであることが判明し、改善の必要性が業界で認識さ
れた。今回の調査は、そうした改善の試みのフォローアップとして実施されたも
のである。

 牛肉消費については、ここ数年回復の動きが伝えられているが、経済の減速に
加えて、口蹄疫、牛海綿状脳症(BSE)など牛肉のイメージダウンにつながるニ
ュースが相次いでいることもあり、その先行きを懸念する声もあるようだ。

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