◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、2000年におけるEU域外との牛肉(生体牛および調製品を含 む)貿易量を発表した。これによると、域外向けの牛肉輸出量は66万3千トン と、前年比31%の大幅な減少を記録した。また、域外からの牛肉輸入量につい ても41万6千トンと、前年比1.9%の減少となった。2000年の輸出量が 大幅に減少した要因としては、99年から続いた域内の牛肉需要の回復により輸 出向けが減少傾向にあったことに加え、2000年後半に発生した牛海綿状脳症 (BSE)問題の再燃・拡大により、域内の牛肉需要は大幅に低下したものの、多 くの国々がEU産牛肉の輸入禁止を行ったことが上げられる。特に、このBSE問題 では、EU最大の輸出先国であるロシア市場を失っただけではなく、一時期、最大 で90ヵ国を超える市場を失った状態となった。
2000年の輸出先を国別に見ると、99年に域外向け輸出量全体の約4割を 占めていたロシア向けの減少が目立っている。ロシア向けの減少については、9 9年3月から実施されていたEUの経済援助による15万トンの牛肉輸出が終了し たことが減少の最大要因といえる。一方、エジプト、レバノンなど中東向けにつ いては、BSE問題に伴う禁輸措置はあったものの、2000年前半の輸出が好調 であったことから大きな減少とはならなかった。また、フィリピン、インドネシ アについても、順調な経済復興に伴う牛肉需要の回復により量的には少ないもの の、増加が目立っている。この地域への輸出については、最大の輸出元となる豪 州の肉牛価格が堅調に推移したことから、EU産牛肉の市場拡大が図られることに なった。 EU域外への牛肉輸出量(2000年) 資料:Eurostat 注:枝肉換算ベース、生体牛および調製品を含む
一方、EU域内への牛肉輸入量については、ブラジル、アルゼンチンをはじめ とする南米からの輸入量が全体の7割強を占めており、引き続き最大の輸出元と なっている。中でも、9割の製品がフローズンや調製品向けとして輸入されるブ ラジルについては、対前年度比で35%の増加を示した99年ほどの増加は見ら れないものの、引き続き2ケタの増加になっている。これは、欧米における加工 向けや調理済み製品への需要の高まりを反映したものである。また、アルゼンチ ンについては、テーブルミート用となるチルドの輸入が中心であるが、2000 年8月に発生した同国での口蹄疫により、輸入量は減少している。 今後の輸出入動向についてEU委員会は、BSE問題に端を発したEU域内の牛肉消 費の低迷に伴い域内の需給バランスが崩れていることから、余剰分の輸出仕向け 等により、落ち込んだ輸出は徐々に回復し、輸入についてはほぼ横ばいで推移す るとみている。 EU域外からの牛肉輸入量(2000年) 資料:Eurostat 注:枝肉換算ベース、生体牛および調製品を含む
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