◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は、2000/01年度(7〜6月)におけるEUの生乳生産割当(生 乳クオータ)制度の下における各国別の生乳生産状況を発表した。この中で、加 盟8ヵ国において生乳クオータを超過する見通しであることが明らかとなった。 EU委員会では、同年度の生乳クオータの超過に対する課徴金額について、加盟国 合計で2億8,872万ユーロ(約317億6千万円:1ユーロ=110円)と 見込んでいる。これは、前年度と比較して加盟国数で見れば4ヵ国減、課徴金額 で見れば25%近い減少となる。84年に導入されたEUの生乳クオータ制度は、 EU域内の生乳需給の不均衡を是正する目的で実施され、この間の生産量は、需要 に比例した枠の拡大により増加傾向で推移してきた。
加盟各国別の生産動向を生乳クオータとの比較で見ると、イタリアが前年度に 引き続き超過となり、EU全体の超過量の約5割を占めている。イタリアの生乳生 産は、国内需要の拡大とともに増加傾向で推移しているが、自給率は依然として 7割台を超えておらず、需給バランスは常にひっ迫傾向にある。このため、ここ 数年、生乳クオータ枠は拡大が図られているが、実際の生乳生産量はこれを超過 する状況が続いている。また、イタリアとともに超過の多かったドイツについて は、90年以降、チーズなどの乳製品需要が拡大するにつれEUの主要乳製品生産 拠点となりつつあり、課徴金の徴収にもかかわらず生乳クオータを超過する傾向 が続いている。一方、前年度に超過となったイギリス、スペインについては、枠 を下回ることになった。これは、イギリスで発生した口蹄疫問題の影響と、スペ インで実施された生乳クオータ枠の拡大によるものとみられている。
2000/01年度に加盟国の生乳クオータ超過量が減少した背景には、この 間に実施された生乳クオータ枠の拡大とともに、農家戸数の減少がある。特に農 家戸数について見ると、2000/01年度の農家戸数(生乳供給農家と直接販 売農家の合計)は、前年度と比較してEU全体で約1割の減少となっている。EUで は、乳肉兼業農家が数多く見られる中で、牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃・拡 大により、肉牛価格が低迷しており、これが農家戸数減少の背景にあるものと推 測される。一方で、EU会計検査院がこのほど公表した生乳クオータ制度に関する 報告書によれば、十分な介入価格の引き下げを行わずに生乳クオータ枠を拡大し たことが生乳の過剰生産を招き、その処分に多額の補助金支出を強いているとし て、2002年には同制度の終了に向けた基本的な提案を行うよう求めている。 EUの乳製品需給動向が引き締まりつつある中で、生乳クオータ制度廃止を視野に 入れた今後の動向が注目される。 主要生産国の生乳生産割当(2000/01年度) 資料:EU委員会 注1:年度は7〜6月 注2:脂肪調整量は3.5%で換算 注3:数値は暫定値
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