◇絵でみる需給動向◇
2001年のEU域内の豚肉価格は、牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃・拡大に 伴う牛肉からの代替需要や、イギリスなどでの口蹄疫発生による供給量の減少を 背景に、堅調な推移を見せている(左図参照)。このような中で、イギリス食肉 家畜委員会(MLC)は、2001年のEU域内の豚肉需給見通しを公表した。これ によると、主要生産国の豚肉生産量は増加傾向を示すものも見られるが、イギリ スおよびオランダの大幅な減産が影響し、EU全体の生産量は減少すると予測して いる。MLCでは、2001年の豚肉生産量(枝肉重量ベース)をEU全体で17, 465千トンとみており、これは2000年の数値と比較して約1%の減少とな っている。
国別の生産動向を見ると、EU最大の豚肉生産国であるドイツでは、過去の豚肉 価格低迷に起因する飼養頭数の減少傾向が、堅調な価格動向に刺激され下げ止ま りに向かいつつあることや、BSE問題による豚肉消費の増加などにより生産量は 前年水準を維持するとしている。また、ドイツに次ぐ豚肉生産国であるスペイン、 フランスについても、豚コレラや口蹄疫発生の余波は残るものの、順調な消費を 反映し、生産はおおむね増加するとしている。このように、主要生産国の豚肉生 産量が前年水準または増加と予測される中で、EU全体の豚肉生産が減少と見込ま れる最大の要因は、イギリスおよびオランダで大幅な豚肉生産の減少が予測され ている点にある。特にイギリスでは、昨年来、為替がEUの単一通貨であるユーロ に対しポンド高で推移したことから、デンマークなどの豚肉製品輸入が急増し、 国内の豚肉業界は大きなダメージを受けていた。また、今年2月の発生からいま だ終息を迎えない口蹄疫問題は、生産の減少にさらなる拍車をかけている。一方、 オランダでは、畜産環境問題を理由とした離農推進政策により、養豚生産の減少 が著しくなっている。 ◇図:主要国における豚肉生産量の推移◇
このように豚肉生産の減少が予測される中で、域内の豚肉需給にも変化が見え 始めている。MLCでは、2001年の豚肉自給率についてEU全体で109.4% と予測しており、これは2000年と比べ0.8%の低下となる。豚肉は、EUの 食肉消費全体の約5割を占める主要食肉であり、拡大する全体の食肉消費を押し 上げる主因の一つでもある。特に、ここ1〜2年、豚肉の消費量は7%近い驚異 的な伸びを示したともいわれ、1人当たりの消費量も順調に増加している。自給 率の低下は、域内消費の拡大の中で豚肉生産力が落ちていることを的確に反映し ている。このことは豚肉輸出余力の低下を意味するものでもあり、引き続き、豚 肉需給の動向が注目される。
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