生乳取引情報の提供事業を開始(イギリス)
酪農家などのニーズに即し幅広い情報を網羅
イギリス酪農振興委員会(MDC)は先般、生乳・乳製品の価格や需給動向など
の新たな生乳取引情報提供サービスを開始した。情報の内容は、イギリスにおけ
る乳業会社ごとの生乳買入価格、農家から乳業会社への生乳出荷量、主要乳製品
の卸売価格といった生乳取引情報に加え、搾乳牛の飼養頭数などの基礎的統計、
さらにはEUにおける生乳・乳製品の価格および生産動向まで、酪農家などのニー
ズに即し幅広く網羅される予定である。こうした情報は政府機関や民間のコンサ
ルタント・専門家から収集され、独自の分析を加えた上で、インターネット
(www.mdcdatum.org.uk)上に公表される。また、隔週刊行のニュースレターは
ファックスやEメールを通じても入手できる。
全酪農家からの課徴金でMDCは運営
MDCはミルクマーケティングボード(MMB)の廃止に伴いMMBの業務の一部を継
承し、95年2月に設立された非政府公益組織(Non‐Departmental Public
Body)である。MDCは酪農に関する技術・経営両面からの研究開発を行い、その
結果を酪農家へ伝達することで、グレートブリテンの酪農家の技術力と競争力の
確保を推進している。また、最近では、乳業界と連携した牛乳消費拡大事業も行
っている。組織運営資金はグレートブリテンの全酪農家から徴収される法定課徴
金(生乳1リットル当たり0.06ペンス:約0.1円、1ポンド=100ペンス=175円)
によって賄われ、年間の課徴金収入は、約800万ポンド(約14億円)に上る。な
お、政府による経費負担は行われていない。
生乳価格形成の透明化向上に期待
イギリスでは、酪農・乳業界の効率化を図るための規制緩和が進められ、一元
的に生乳を集荷・販売していたMMBが94〜95年にかけて廃止された。これに伴い、
生乳の集荷・販売の独占権を持たない5つの後継組織が設立され、大半の旧MMB
会員を獲得したものの、生乳取引の自由化は取引形態の大きな変化をもたらした。
2000年には、MMBの後継組織の中で最大の生乳集荷量を誇っていたミルクマーク
が、大規模な独占状態を利用して価格操作を行い、生乳の供給を不当に管理して
いると非難され、3つに分割されることを余儀なくされた。さらに、MMBの後継
組織を通さない酪農家・酪農家グループと乳業会社の直接取引も徐々に増加して
おり、一部に酪農家側の価格交渉力の低下を懸念する向きもある。一方、イギリ
スの乳業界では、世界的な傾向と同様に乳業会社の合併・買収による合理化・巨
大化が急速に進んでおり、公正な取引環境を維持する上で、公益組織による市場
情報提供の必要性が指摘されていた。今回のMDCによる新たな生乳取引情報の提
供は、酪農家の交渉力を補完するだけでなく、生乳の価格形成における透明性の
向上につながるものと期待されている。
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