ブラジル農務省、トウモロコシの作付けを奨励


トウモロコシ作付面積は前年比8.3%減の見込み

 ブラジルの大手調査会社が7月に行った穀物の作付意向調査によると、今年の
トウモロコシの作付面積は前年比8.3%減の約1,200万ヘクタールと見込まれて
いる。これは、生産者がトウモロコシより価格が優位である大豆などの作付けを
選択すると予想されることが大きい。

 一方、ブラジル農務省では、同国の養鶏、養豚産業などからの需要に応じられ
る飼料原料生産を確保し、ブラジル産食肉輸出の増大を目指していることなどか
ら、トウモロコシの作付面積の減少傾向に歯止めをかけたいとしている。


トウモロコシ作付奨励で融資限度額を拡大

 同省は例年、農業融資制度や最低価格保証制度などを柱とする農業プランを発
表する。同プランの目的の一つは、生産者が作付作物の最良な選択を行うことに
あるとしている。7月初めに発表された2001/02年度(2001年7月〜2002年6
月)の新農業プランにおける農業融資制度では、大豆生産者に対する融資限度額
が前年度に比べ2.0倍〜2.5倍と大幅に引き上げられたのに対し、トウモロコシ生
産者に対しては前年度と同額の20万レアル(約940万円:1レアル=47円)と据
え置かれた。しかし、同省は7月下旬、トウモロコシ作付面積の減少が懸念され
るとして、トウモロコシの主産地における融資限度額を25万レアル(約1,175万
円)に引き上げる発表を行った。


販売オプション契約で生産者の作付意欲を刺激する狙い

 さらに、8月下旬、2001/02年度におけるトウモロコシの販売オプション契
約として作付期を通じて300万トンの競売を実施する予定であり、その第1回目
として、2002年3月15日を満期日とする60万トンの競売を9月5日に実施する
と発表した。なお、前年度分については、収穫期を通じて約240万トンの競売が
実施された。この販売オプション契約とは、生産者または組合が、オプション料
を支払うことで、契約の満期日に、決められた価格(権利行使価格)で生産物を
政府に対し売却する権利を保有するものである。今年度の契約では競売日が作付
期に、満期日が収穫期に設定されたが、これは、生産者が作付けの選択を行う際
に、下落が予想される収穫期の生産物価格を政府があらかじめ一定価格で保証す
ることで、生産者の作付意欲を刺激することが狙いであった。なお、今年度の契
約では、権利行使価格が10.00レアル(約470円)/60kgに設定された。

 また、今年度におけるトウモロコシ販売オプション契約の競売分300万トンの
州別割当数量は、パラナ州113万トン、リオグランデドスル州24万9万千トン、
ミナスジェライス州5万8千トン、サンタカタリナ州19万3千トン、ゴイアス州
87万7千トン、サンパウロ州2万7千トン、マットグロッソドスル州31万4千ト
ン、その他の州15万2千トンとされた。


期待外れとなった政府のトウモロコシ作付奨励策

 同省では、こうしたトウモロコシ作付奨励策により、畜産部門などからの需要
に応じられる飼料原料生産を確保するだけでなく、余剰トウモロコシの輸出を推
進する意向であることも発表している。しかし、国家食糧供給公社(CONAB)に
よると、今年度におけるトウモロコシ販売オプション契約は、9月5日から10月
3日にかけて、ほぼ予定通りの約301万トンの販売が実施されたが、このうち成
約したのはわずか約20万7千トンにとどまった。業界関係者の間では、政府によ
るトウモロコシ作付奨励策は大部分の生産者が作付作物を決定した後に実施され
たことなどから、同奨励策に対する生産者の関心が薄かったとして、政府発表の
遅れを指摘する声が多い。

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