米農務省、将来の食料・農業政策の諸原則を提言
現行政策の問題点を踏まえた将来政策の方向を提示
米農務省(USDA)は9月19日、将来の食料・農業政策に関する政府とし
ての諸原則(principles)を公表した。これは、「新世紀に向けた現状の考察」
という副題が付された約120ページに及ぶレポートによるもので、次期農業法の
制定に向けた議論のたたき台という性格も有する。
現行の96年農業法の有効期間は1年あまり残されているが、米国経済の減速に
より財源確保が困難なことに加え、来年が中間選挙の年に当たることもあり、早
くも今年7月には下院農業委員会で次期農業法案が可決されるなど、議会の先行
した動きが目立っていた。今回のUSDAの基本方針は、議会に対し何ら拘束力を持
つものではなく、内容的にも、次期農業法に盛り込むべき具体的な政策の提示と
いった直截的な記述は見られないが、現行政策の問題点や、これを踏まえた将来
のあるべき政策の方向が、データ的な裏付けとともに示されており、今後の議会
審議を大きく左右することも想定される。
市場志向型でWTO整合的であることが理念
政策の種類別に全体で7つのパートからなる「諸原則」に通底するのは、米国
における食料・農業をめぐる情勢が「洗練された消費者(ニーズ)によって主導
され、グローバル化し、技術的に進化し、急速に多様化し、競争が激化している」
(ベネマン農務長官)という現状認識であり、また、これに対処するための政策
は、市場志向型で、財政効率が良く、世界貿易機関(WTO)協定にも整合的でな
ければならないという理念である。
その特徴的な内容は以下のとおりである(他の項目としては、「農村地域政策」、
「栄養・食料援助政策」、「政策統合」が挙げられている)。
@「貿易の拡大」:市場アクセス拡大には、関税引き下げと貿易わい曲的な補助
金の撤廃が必要である。競争力確保のため、国内の農家支持政策と国際的な貿
易政策とが完全に調和し、これらは現行国際約束にも適合する必要がある。
A「農家政策」:規模、地域、作目、財政事情などの面で多様化する農家の実態
やニーズを反映した政策が講じられるべきである(背景には、直接支払いの交
付額が少数の大規模経営体に偏っているという問題)。予期せぬ収入減などに
対処するためのセーフティ・ネットは、市場指向型の、経済的で、透明性のあ
る、公平なものとすべきである。
B「インフラ政策」:動植物検疫、食品衛生、環境保全といった、フード・チェ
ーン全体のサービス、施設・設備、組織についての、今日的役割に応じた整備
が必要である。
C「環境保全政策」:費用対効果の高い、柔軟で広範な政策を講じるとともに、
生産拡大政策との調和が必要である(WTO協定上の「緑」の政策に区分される
ことも必要である)。
次期農業法をめぐり、財政的にさらに大きな制約も
米国経済の減速による財政黒字の縮小に加え、9月11日の米国内における同時
多発テロの影響で、復興や経済対策などに必要な緊急的財政支出も予定されてお
り、次期農業法をめぐっては、財政面でさらに大きな制約が課されることは避け
られない状況となっている。
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