今年上半期の乳製品の輸出入統計を公表
輸入は1.3%の減少、輸出は56.0%の増加
フィリピン酪農公社(NDA)はこのほど、2002年上半期の乳製品の輸出入統
計を公表した。これによると、輸入が前年同期比1.3%減の78万1千トン(全乳
換算、以下同じ)とわずかに減少したのに対し、輸出は56.0%増の6万9千トン
と大幅に増加した。拡大する東南アジアの乳製品需要に照準を合わせ、アセア
ン域内における輸出拠点を目指す同国の乳業部門が、着実に成長している様子
がうかがえる。
政府による輸出型企業の支援と脆弱な生産基盤が輸出入に影響
同公社は、輸出が大幅に伸びた要因として、政府が、停滞する同国経済を刺
激することを期待して、輸出型企業の活動を積極的に支援したことに加え、ネ
スレ・フィリピン社やアラスカ・ミルク社をはじめとした乳業会社が目覚しい
活躍を遂げたことを挙げている。特に、東南アジアのグループ中、最大の業績
を上げるネスレ・フィリピン社は、度重なる投資戦略により、域内における育
児用粉乳やフィルド乳製品(乳脂肪の一部をパーム油などの植物性油脂に置き
換えたもの)の供給センターとしての位置を確立する体制を整えつつある。こ
うしたことから、フィリピンのアセアン域内に対する輸出攻勢はますます強ま
るものと思われる。
一方、国内の生乳生産の基盤が極めて脆弱であることから、輸入は前年同期
とほぼ同じ水準となっている。品目別では、上位3品目は輸出の主力である粉
乳類の製造に関連の深い品目で、脱脂粉乳が前年同期比6.4%減の32万6千トン、
全脂粉乳が同6.8%減の14万4千トン、濃縮ホエイが同6.5%増の13万1千トンと
なっている。次いで多いのはバターで、同7.9%増の2万7千トン、また、消費
が伸び悩む牛乳は同1.7%減の1万9千トンにとどまっている。
主な輸出相手国は東南アジアのイスラム教徒の比率の高い国
輸出先を国別に見ると、マレーシアが前年同期比34.3%増の3万7千トン、イ
ンドネシアが同18.3%減の2万1千トン、タイが同330%増の4千トン、ベトナム
が同21.6%増の4千トンとなっている。以上の4ヵ国で輸出量全体の95%を占め、
その中でも、上位2ヵ国のイスラム圏諸国は全体の8割以上を占めている。フィ
リピンは、ハラル食品(イスラム教徒が食することが可能な食品)の製造・輸
出に力を入れることを表明していることから、イスラム教徒の比率が高いマレ
ーシアやインドネシアへの乳製品をはじめとする畜産物の輸出は、今後、一層
増加すると考えられる。なお、同国から輸出される乳製品は、粉乳を原料とし
て使用した製品およびフィルド乳製品が全体の99.6%を占め、残りの0.4%が
チーズとなっている。
輸入相手国はオセアニア、米・EUへの依存度は減少傾向
また、輸入先を国別に見ると、豪州が前年同期比11.8%減の31万トン、ニュ
ージーランドが同31.8%増の26万1千トン、米国が同19.8%減の6万5千トン、
シンガポールが49.3%増の3万3千トンと続く。オセアニアとシンガポールの輸
入シェアの合計は、前年同期より5ポイント増加して77.3%となり、米国やEU
への依存度は次第に低くなる傾向にある。今後は、東南アジアおよびオセアニ
アという枠組みの中での貿易相互関係が一層深まっていくものと思われる。
政府、NDAとも生乳生産基盤の確立が急務との見方
こうした状況の中で、NDAは、2003年に予定されるアセアン自由貿易
圏(AFTA)について、関税率の低下によって安価な原材料の輸入が増加し、ND
Aが進める生乳の自給率増大政策が打撃を被るとともに、国内の生乳生産基盤
がますます脆弱化するとして懸念を示した。一方、モンテメーヤー農務長官も、
同国における生乳の自給率が1%程度に過ぎないという現状を改めて踏まえ、
酪農家に対して、生乳の生産拡大への努力を怠らないよう啓発に努めると述べ
た。
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