米農務省、自主的な原産国表示の暫定ガイドラインを公表
2年後の義務化への移行もにらみ、内外から多数のパブリック・コメントが集まる
今年5月に成立した新農業法(2002年農業法)に基づき、米農務省(USDA)は
10月11日付けの官報で、食肉(牛、羊および豚の精肉・ひき肉)を含む生鮮農産
物などを対象とした原産国の自主的表示に関する暫定的なガイドラインを公表し
た(新農業法における本件の規定内容やこれをめぐる議論については、「畜産の
情報・海外編」2002年9月号を参照)。
本来、新農業法には、USDAが、今年9月30日までにこのガイドラインを公表し、
2年後の2004年9月30日までに義務表示に関する規則の制定を行うこととされてい
た。今回の公表の遅れは、新農業法の成立からわずか5カ月足らずというタイト
な期間の中で、特に食肉に関しては、カナダやメキシコからの素畜供給の問題な
ど、関係者の利害が複雑に絡んでいることが背景にあり、2年後の義務化への移
行もにらんで、これまでに内外から400件以上ものパブリック・コメ
ントが寄せられている。
暫定ガイドラインの主なポイント
@ ガイドラインはあくまでも自主的なものであるが、これを採用することを決
定した小売業者や流通業者においては、ガイドラインのすべての規定に従う必
要がある。
A この場合の原産国表示を行う者は、年間販売額が23万ドル(約2,850万円:1
ドル=124円)を超える小売業者とされ、専門小売店(ブッチャー・ショップ)
などは含まれない。
B 原産国表示の対象である精肉には、テンダライズされたステーキ肉や味付け
肉などは含まれるが、塩せき・塩づけ肉や加熱済み調理用肉(ready-to-cook)
などは除外され、また、ひき肉からは、植物たん白などを加えた混ぜ物やソー
セージなどの加工製品が除外される。
C 「米国産」という表示ができるのは、米国内で出生し、飼養され、と畜され
た家畜由来のものに限られる(牛肉については、アラスカまたはハワイで出生
し、飼養された後、カナダ経由で60日以内に輸入され、米国内でと畜されたも
のも含まれる)。
D 輸入産品については、基本的に現行の連邦法に従う(例えば、輸入されたま
まの形状で小売りされる食肉は、当該輸出国名を原産国として表示する)こと
となるが、証明し得る記録が保持されていれば、「X国で出生、Y国で飼養、米
国でと畜」といった表示をすることも可能。
E 原料の原産地が異なるブレンド商品については、原料の構成重量の順に表示
(例えばひき肉で3種類のひき材を用いている場合、それらの重量の順番に「X国
から輸入され米国でと畜された牛由来のもの;Y国産;米国産」という表示が
可能)。
賛否両論のコメントの中には、WTO協定整合性などを問題視する声も
以上のように、今回のUSDAのガイドラインにおいては、複数の原産国名が併記
できるといった「選択の幅」は広げられたものの、「米国産」という表示を可能
とするための要件は、世界でも類を見ないほど厳しいものであることに変わりは
ない。賛否両論のパブリック・コメントの中には、「労多くして功少なし」とし
て義務化への移行に反対する国内の肉畜生産者の全国団体や食肉パッカーの団体
などに加えて、隣国カナダのほか、牛ひき材の供給国である豪州およびニュージ
ーランドの政府・関係団体からも、世界貿易機関(WTO)協定整合性などを問題
視したコメントが提出されている。
USDAは、正式なガイドライン制定に向けて、今後も2003年4月9日までコメント
を受け付けるとしている
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