タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○改善が進む農家収益


農家販売価格の高騰続く

 タイ農業協同組合省が公表した2001年9月のブロイラーの農家販売価格は、
前年同月比15.9%高の1kg当たり29.2バーツ(約91円:1バーツ=3.
1円)となり、価格自体は8月、9月と連続して下落したものの依然として高水
準を維持している。

 農家販売価格は、2000年8月に約2年振りに前年を上回った後、同年11
月から12月にかけて再び前年を割り込んだ。しかし、海外を中心とした力強い
鶏肉需要に支えられてブロイラー生産は増加の一途をたどる中で、農家販売価格
は2001年1月以降は一貫して前年を上回って推移している。

◇図:ブロイラーの農家販売価格の推移◇


ブロイラー農家、9ヵ月連続で収益を確保

 一方、農家販売価格および生産費から計算した農家収益も、2001年1月以
降、通年で前月を上回るとともにプラスを維持し、長期間続いた伸び悩みの状態
からの改善が図られる傾向が強まっている。

 ブロイラー生産農家は、97年に顕在化した経済危機の影響を受けつつも、9
8年はほぼ通年で利益を確保していた。しかし、99〜2000年の農家収益は
乱高下を繰り返し、販売価格が生産費を下回る「採算割れ」の状況が度々引き起
こされた。こうした状況が続くことによる生産農家の体力低下が懸念されていた
が、最近の収益状況の改善傾向を考慮すると、今後しばらくは安定した再生産へ
の投資意欲が期待できるものと思われる。

◇図:ブロイラー農家の収益グラフ(生産費−農家販売価格)◇


懸念材料は生産費の上昇傾向

 しかし、2001年9月の時点で、農家は通年で利益を確保しているものの、
今後の農家経営に影響する懸念材料の一つとして、生産費の上昇傾向が挙げられ
る。9月のブロイラー1kg当たりの生産費は、前年同月比で12.1%高の27.
8バーツ(約86円)となった。

 生産費は、4月以降前年を上回って推移している。特に、全体の7割を占める
飼料費のうち、肥育用が4〜8月に大幅な増加を示したほか、全体の2割を占め
るひな価格も、第3四半期に入ると急激な上昇を見せ、9月は前年同月比60.
7%高の1羽当たり13.5バーツ(約42円)とこの3年間での最高値となっ
ている。さらに、ブロイラーの生産が急ピッチで進んでいることから、今後はイ
ンフラの再構築など投資コストの増加も予想され、長期的に見ると、これらが総
合的に経営を圧迫する要因になることも考えられる。

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