地道な努力と大地が育んだ良質バター 

(フランス:エシレ)

(ブラッセル事務所 山田 理、吉江 昭、島森宏夫)



    
ポワトゥー=シャラント地方
   

    
 パリから南西に約350km、フ
ランス中西部、ポワトゥ=シャ
ラント地方のドゥ・セーブル県
に位置する。
ひとくちメモ

 人口3,000人ほどのエシレ(Echire)村は、風味に優れ、さっぱりとした味わ
いの発酵バターの産地としてその名を内外に知られている。この地で本格的に酪
農が開始されたのは、害虫(フィロキセラ)のため大打撃を受けたブドウ栽培農
家が、1890年ごろに酪農を始めたのが発端である。これを機に設立されたエシレ
酪農組合を中心として、バターの品質向上に向けた地道な努力が続けられている。
1900年には、パリ万国博覧会で1等賞を獲得するなど早くから名声が確立された。
バター全体の消費が停滞する近年にあっても、エシレのバターは高い品質が評価
され高価格で取り引きされており、地域の酪農家の経営安定に大きく寄与してい
る。また、フランスの3つ星レストランを始め世界各国の料理人に愛され続け、
現在ではEU各国や、米国、日本など世界29ヵ国に輸出されている。
 1894年6月に、セブール河畔の豊かな水源地のほとりにエシレ酪農組合が
設立された。現在も設立当時の建物を、事務所兼バター工場として使用している。
 バター製造では、原料として使われる牛
乳の鮮度が重要なカギを握る。このため、
牛乳は毎日、酪農家から集荷され、工場は
休むことなく稼働している。1日当たりの
集乳量は5〜6万〓で、年間約1,000トンの
バターを製造している。

    

    
バターの製造工程
   
 伝統的なバター製造法をかたくなに
守っている。今では珍しくなったチー
ク材製のバターチャーンを使用してい
るのもその1つである。

    

    
 主力製品である250グラム以上のバターは、機械化が進んだ現在でも手作業
で包装される。
 エシレのために生乳を供給する酪農家の1つ、サロー(Sarraud)家の農場。
主にホルスタインを飼育している。飼料給与などの飼養管理は、エシレ酪農組合
で定めたマニュアルに沿って行われる。現在、66軒の酪農経営体がエシレ酪農組
合に生乳を供給している。サロー家のように、個人経営の農家もあるが、複数の
農家が集まりガエックと呼ばれる共同経営を行うものも少なくはない。
 牧草を育てるこの地域の土壌が、生乳を
通じてエシレのバターに独特の風味を与え
ている。バター生産のための地道な努力に
加え、この地域の大地がエシレのバターの
品質を支えている。

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