EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○2001年第3四半期のEU域外向け乳製品輸出は減少に


域外向け乳製品輸出はおおむね減少

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2001年第3四半期までの
EU産乳製品の域外向け輸出量は、消費の拡大が伝えられるチーズを除きいずれも
前年同期比減少となった。特に脱脂粉乳、全粉乳の減少が大きく目立っている。
これは、世界的な景気停滞感に伴う乳製品需給の緩和とともに、高価格で推移し
た乳製品価格による消費への影響が要因にあるとみられている。今年初めまでの
乳製品需給動向は、原油価格の上昇を背景とした中東諸国の輸入拡大や東南アジ
アの消費拡大を受けて、世界的にひっ迫感が漂っていた。また、これに伴い国際
価格も上昇を続けたことから、EUの乳製品輸出は、脱脂粉乳、チーズを中心に前
年比で2ケタの超える伸びを記録していた。

◇図:EUの乳製品輸出量(1〜9月)◇


輸出市場での競争力低下が要因

 EUの域外向け乳製品輸出が減少したもう1つの要因として、乳製品需給の緩和
とともに輸出市場におけるEU産乳製品の価格競争力低下も挙げられる。2001
年の乳製品輸出市場を見ると、国際的に需給が緩和傾向となる中で、米国の生産
過剰に伴う粉乳などの流入増、また、輸出強化を進めるオセアニアの進出などが
目立っている。このような中で、EUの乳製品輸出を支える輸出補助金は、200
0年の国際価格上昇に伴い段階的に削減され、脱脂粉乳については2001年7
月にゼロとなった。EUの乳製品輸出は、オセアニアなど主要生産国と比較して価
格競争力を持たないこともあり、これら輸出補助金の削減は、輸出市場における
EUの地位をさらにぜい弱なものとさせた。


チーズを除き乳製品生産は減少傾向に

 EUでは、牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃・拡大に伴い子牛向け粉乳需要
が低下し、また、近年のバター消費の不振などから、乳製品価格については、需
要が拡大するチーズを除きいずれも下落傾向にある。このため、これらの価格動
向を的確に反映し、2001年の乳製品生産はチーズを除きいずれも減少傾向で
推移している。EUは、需給調整機能の一つとして、11月に入りこれまで引き下
げてきた脱脂粉乳など乳製品輸出補助金の引き上げを実施した。しかし、競争の
激化が見込まれる輸出市場において、わずかな引き上げではその効果を疑問視す
る声もある。このため、今後の乳製品生産については、チーズへの特化がより進
み、粉乳などについてはいずれも減少傾向で推移せざるを得ないものとみられて
いる。

EUの乳製品生産量(1〜10月)

 資料:ZMP
  注:2001年の数値は暫定値

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