◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、2001年のEU15ヵ国豚と畜頭数を公表した。これによると、 5月末時点のと畜頭数は合計で8,217万3千頭と前年同期比3.1%の減少 となった。EUの豚と畜動向は、98〜99年にかけての記録的な価格暴落による 飼養頭数の減少から若干の落ち込みを見せたが、好調なEU経済を背景とする活発 な域内需要を反映し、その後はおおむね増加傾向で推移していた。2001年の 減少要因については、EUの主要豚肉生産国であるデンマーク、ドイツなどについ ては、牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃・拡大による牛肉からの代替需要などを 背景に増加となったものの、口蹄疫発生の影響を受けたイギリス、オランダなど で大幅に減少したことが挙げられる。 EUの豚と畜頭数 資料:EU委員会
と畜頭数の減少と活発な域内需要を反映し、2001年のEU域外向け豚肉輸出 は大きな減少を見せている。デンマークなどEUの主要豚肉輸出国の動向を見ると、 8月までの実績ではいずれも前年同期比2ケタの減少となっている。これは、活 発な域内需要を背景とした豚肉価格上昇によるものが大きい。このため、口蹄疫 の被害により国内の豚肉流通が停滞したイギリスなどを中心に、流通の中心を域 内へと移していた。一方、前年同期比で輸出増加となったドイツについては、と 畜頭数の増加に合わせロシア向け輸出を強化したことがその要因として挙げられ る。 主要豚肉輸出国の域外向け輸出量(1〜8月) 資料:EU委員会
このような中、2001年10月まで28ヵ月連続して前年同期実績を上回っ ていた豚肉価格は、一転して下落傾向となった。これは、高値で推移した豚肉に 対して消費者の豚肉離れが進んだことと、牛肉需要が着実に回復傾向にあること が要因であるとみられている。2001年12月の豚枝肉価格(EU平均:市場参 考価格)は、100kg当たり144.1ユーロ(約1万7,290円:1ユーロ =120円)と前年同月比8.8%減となった。当初、市場関係者の間では、こ の時期に平均価格は100kg当たり145ユーロ台まで下降すると見られていた が、実際にはこれを上回る速度となっている。今後、EUへの冷蔵輸出が可能とな ったポーランドからの輸入増も見込まれるだけに、域内の豚肉価格はここしばら く下降局面が続くとみられている。 ◇図:豚枝肉価格の増減率(対前年同月比:EU平均)◇
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