EU、伯リオグランデドスル州産牛肉解禁(ブラジル)


2001年5月、肉牛生産州で口蹄疫発生

 ブラジルでも有数の肉牛生産州であるリオグランデドスル州での口蹄疫発生を
受け、2001年5月から同州産の生鮮牛肉の輸入を中止していたEUは、10月に実施
した家畜衛生調査結果に基づき、12月1日から同州産の骨抜き熟成生鮮牛肉の輸
入を解禁することを決定した。また、同州産の偶蹄類家畜とその食肉をブラジル
国内の口蹄疫清浄地域へ搬出できるようになった。今回のEUの決定により、同州
産牛肉のチリや中東諸国向け輸出の再開への可能性も高まっている。

 ブラジル南部畜産圏を形成するリオグランデドスルとサンタカタリナ2州は、
98年に国際獣疫事務局(OIE)によりワクチン接種清浄地域に認定され、さらに
ワクチン不接種清浄地域の認定を求めて2000年5月1日からワクチン接種を中止
していた。しかしながら2001年5月リオグランデドスル州で口蹄疫が発生し、同
州はワクチン接種に踏み切ったため、同州産の牛肉は、EUをはじめ主要な輸出市
場を失っていた。


口蹄疫の清浄地域拡大により生鮮牛肉の輸出に大きな期待

 2000年にOIEによりワクチン接種清浄地域に認定された1連邦地区と南・中西
部5州に続き、2001年には東部畜産圏を形成するマットグロッソドスル、トカン
チンス、リオデジャネイロ、エスピリトサント、バイア、セルジーペの6州がワ
クチン接種清浄地域に認定され、清浄地域が大幅に拡大し、現在ブラジルでは、
約1億6千万頭の肉牛の8割以上が清浄地域で飼養されている。ブラジル政府は
衛生ステイタスの向上と、99年1月の自国通貨レアルの切り下げで輸出競争力を
増したことを背景に、今後の牛肉輸出に大きな期待をかけている。

 最近、プラチニデモラエス農相が雑誌記事のインタビューにおいて、2億2千
万haの牧草地で健康的に育った肉牛の肉を「ブラジリアンビーフ」の商標で国内
外に精力的に売りこみ、2002年には枝肉ベースで約60万トン、輸出額にして約10
億ドル(約1,330億円:1ドル=133円)を目指しており、そのためには現在5,0
00トンのEU向け高級牛肉ヒルトン枠の拡大や、NAFTA(北米自由貿易協定)市場、
特に米国への生鮮牛肉輸出の実現に努力する必要があると回答している。


放牧肥育を主体とした有機牛肉「緑の肉牛」生産を推奨

 最近、有機牛肉生産プロジェクトが各地で旗揚げされており、これらは「緑の
肉牛」生産として知られている。うたい文句から見れば牧草肥育、ヘルシーな牛
肉生産に尽きるが、低コスト生産も生産者には魅力のようである。従来の放牧の
みでは仕上がりが遅く肉質も良くなく、またフィードロット肥育ではうたい文句
が生かせず、初期投資も莫大である。そこで「緑の肉牛」生産では放牧肥育を主
体に乾期に補助飼料のみを給与するセミフィードロット肥育が採用されており、
ゼブー生産者協会の本部があるミナスジェライス州のプロジェクトでは、生体重
で250kg、枝肉を覆う皮下脂肪が3mmに達した時点、おおむね18〜30カ月齢の肉
牛を出荷することを推奨している。多汁性で柔らかく風味の良い若牛の肉を生産
することに重点が置かれており、米国や豪州のフィードロット生産コストの半分
と試算されている。

 最近のブラジルの肉牛生産はかなり戦略的に行われている印象があるが、生産
者の中には宣伝だけが立派で、世界の求める肉質とは何かを生産者に明確に示す
努力がなされていないという批判もあるようだ。

元のページに戻る