国際市場への可能性を探る中国のダチョウ産業


無駄のない生物資源として注目

 アフリカ原産のダチョウの人工飼育は、80年代始めころから世界各地で行われ
るようになっている。ダチョウは年間40個ほど卵を生むことに加え、草食で比較
的成長も早く、一般的にふ化したヒナが出荷に適するまでの期間は、およそ11〜
12ヵ月とされている。産出されるダチョウの肉は高タンパクである一方、低脂肪
かつ低コレステロールであり、カルシウムや鉄分、亜鉛などの含有量は、牛肉の
3〜4倍にも上るといわれる。また、皮革は柔軟で強く、弾力性があって通気性
にも優れていることなどから、日本や欧米などでは、その需要に供給が追いつか
ない状況にあるとみられている。このほか、中国では、ダチョウの脂肪が化粧品
の原料として使用され、血液も薬品の製造原料にされている。また、羽毛は精密
機械の清掃用や装飾品として、卵の殻も早くから工芸品として使われているなど、
ダチョウは無駄のない生物資源として脚光を浴びつつある。


中国では、わずか8年で200を超える飼養企業

 このような中、中国では2001年現在、導入が開始されてからわずか8年という
短い期間で、全国にさまざまなダチョウ飼養企業が誕生している。その数は200
社を超え、このほかに小規模な飼育場が多数存在している。このように中国でダ
チョウ産業が急速な成長を遂げてきた背景には、@比較的限られた土地で多数の
飼養が可能であること、A草や茎などに少量のふすま、豆かすなどを加えるだけ
で飼養できること、B政府の目指す畜種構造の調整と国民の食生活改善が期待で
きること、C経済収益性が高く1羽当たり数百〜1千元(約7千〜1万6千円:
1元=15.9円)の収益が見込めること、などの要因によるといわれる。現在、中
国には、繁殖用3万羽を含む約10万羽のダチョウが飼養され、飼養規模では世界
第5位、アジア最大のダチョウ飼養国となっている。96年には中国駝鳥(だちょ
う)協会が設立され、関係者は、この8年間で導入、飼養から加工、市場への出
荷まで、1つの道筋をつけることができたとしている。


今後の発展には、ダチョウ肉の販売促進がカギ

 短期間でアジア最大のダチョウ飼養国となった中国には、多くの外国企業によ
る投資の目が向けられており、中国企業との間で、飼養、製品加工、市場開発な
どについて合弁会社を設立する動きもある。このため、中国のダチョウ業界では、
品種の改良と総合的な利用方法の構築が急務となっている。中国畜牧水産報によ
ると、現在はダチョウ皮革の需要が強く、日本でも毎年4〜5万枚が消費されて
いるという。しかし、皮革あるいは皮革製品の販売だけではダチョウの持つ価値
を十分に活かせず、業界では、今後、ダチョウ産業がさらなる発展を遂げるため
に、ダチョウ肉の販売促進がカギになると見ている。

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