◇絵でみる需給動向◇
EUは11月16日、前日に行われた乳製品管理委員会での採択を受けて、脱脂 粉乳、バターなどに対する輸出補助金の引き上げを実施した。脱脂粉乳に対する 輸出補助金は、国際価格が下降傾向に入った97年後半から引き上げが続いてき たが、世界的な需給の引き締まりを背景とした国際価格の上昇を受けて99年1 0月から引き下げに転じ、その後、ほぼ毎月のペースで引き下げられていた。こ の結果、2001年7月にはゼロとなり、輸出補助金は実質的に停止状態となっ ていた。今回の引き上げにより脱脂粉乳の輸出補助金額は、100s当たり10 ユーロ(約1,120円:1ユーロ=112円)となり、4ヵ月ぶりの再開とな った。 ◇図:EUの脱脂粉乳輸出補助金と国際価格の推移◇
脱脂粉乳の輸出補助金が引き上げられた背景には、高水準で推移した国際価格 がここに来て低下局面にあることが挙げられる。脱脂粉乳の国際価格は、EUの生 産減少に伴い輸出市場での取引量が縮小する一方、中東諸国や東南アジア各国を 中心とした需要拡大により、99年半ば以降、大幅に上昇していた。しかし、世 界的に経済の停滞感が強まる中で、オセアニアの供給増による先安感から国際価 格は低下傾向にある。また、米国の乳製品輸出奨励計画(DEIP)に基づく年間割 当計画が11月2日から開始されたことで、輸出市場への供給量増加が予想され ることも影響している。EUの需要動向を見ると、消費の主流を占めていた子牛向 けなどの家畜飼料需要が、脱脂粉乳価格の上昇により敬遠されたことや、200 1年2月の口蹄疫発生や牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃・拡大による牛肉生産 抑制策の影響により大幅に減少している。 ◇図:脱脂粉乳生産量の増減率(対前年同月比:EU12ヵ国合計)◇
一方、バターについては、2001年半ば以降、EUの民間在庫補助開始に伴 う輸出市場への供給量減少や、回復傾向にあった国際需要を背景に国際価格は回 復基調にあった。このため、2001年6月に輸出補助金は引き下げられたが、 ロシア向け輸出の低迷や、輸出市場に向けたオセアニア、南米の供給量増加によ り、国際価格は横ばいで推移している。輸出市場におけるEU産バターの価格競争 力の回復を狙うためには、輸出補助金の引き上げは必要な措置とみられている。 今回の引き上げにより、バターの輸出補助金は100s当たり160ユーロ(約 17,920円)となった。なお、輸出補助金の引き上げに際しては、フランス など主要酪農国によるEU委員会への強い働きかけが背景にあったとみられている。 ◇図:EUのバター輸出補助金と国際価格の推移◇
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