口蹄疫の影響が懸念される牛肉生産(イギリス)
口蹄疫発生による牛のと畜頭数は80万頭に
2001年2月に発生したイギリスの口蹄疫(FMD)の発生総数は、12月10日現在
で2,030件に上っている。しかし、10月1日以降、新たなFMD発生の報告はなく、
完全に終息したとの見方も出始めている。また、既に、同国の一部地域からは、
EU域内への食肉輸出再開が認められた。こうした中、イギリス食肉家畜委員会
(MLC)は先般、同国における2002年までの牛肉需給見込みを公表し、FMDによ
る今後の牛肉需給への影響について言及した。これによると、FMD発生を要因と
してと畜された牛は、FMD清浄化のための殺処分として約62万頭、過密飼養を避
けるための動物福祉の観点による処分・廃棄として約18万頭の計約80万頭(総飼
養頭数の約7%)に上ると推計されている。
若齢牛のと畜頭数は、2003年頃まで減少と予測
処分された牛のうち、経産牛および初妊牛が全体の4割に当たる32万頭を占め
ている。この結果、食用に供される若齢牛のと畜頭数は、2001年で前年比11.1%
減が見込まれ、さらに2002年も同6.2%の減少が予想されている。特に、未経産
牛については、その多くがFMD清浄化後の牛群再建のため、農家保留が見込まれ
ることから、顕著な落ち込みが予想されている。最終的には、今回のFMD発生に
よる若齢牛のと畜頭数に与える影響は、2003年頃まで続くものとみられている。
口蹄疫により牛肉消費も減少、2002年には若干の回復も
一方、2001年の牛肉生産量は、一部の牛について出荷が遅延となったため、平
均枝肉重量が増加する結果、前年比10.2%減の63万6千トンにとどまるとしてい
る。しかし、平均枝肉重量が元に戻る2002年には、同7.4%減の58万9千トンと、
と畜頭数の減少率以上に落ち込む見込みである。一方、2001年の牛肉消費量は、
FMDのマイナスイメージなどの影響で減少するものの、2002年には若干回復する
とみられる(イギリスの牛肉消費量は、牛海綿状脳症(BSE)問題の発生により
96年以降大きく落ち込んでいたが、2000年にはBSE問題以前の水準に回復してい
る)。
牛肉生産の減少は、EU域内からの輸入増で対応
牛肉輸入量については、国内生産の大幅な減少に伴い2001年および2002年とも
に増加が見込まれる。なお、南米諸国がFMDの問題を抱えているため、これらの
輸出増加分のほとんどが、アイルランドを始めとした他のEU諸国からの供給分で
賄われるとしている。アイルランドからの輸入は、(同国のFMD発生のため)200
1年上半期は減少となったが、第3四半期から増加に転じている。BSE問題の再燃
・拡大により、EU全体の牛肉消費が約10%程度落ち込みを見せる中で、イギリス
は魅力的な市場となりつつある。
イギリスの牛肉需給見込み
資料:MLC
注:2000年の消費量および2001年以降の数値は予測値
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