EU、動物福祉の観点から豚飼養基準を強化
豚飼養時の基準を詳細に規定
EU委員会は11月9日、豚に関する動物福祉の観点から、豚の飼養基準(理事会
指令91/630/EEC)を改定・強化することを決定した。今回の改定は10月23日
の改定に続くもので、豚飼養時に遵守すべき事項として、豚の飼育環境、最低照
度、最高騒音値、離乳時期などが細かく盛り込まれた。EUでは、動物愛護団体な
どを中心に現行の管理基準が不十分として、家畜飼養環境の改善を求めてEU委員
会やEU議会に対し強い働きかけが続けられていた。また、EUの家畜衛生および動
物福祉に関する科学委員会も97年9月に、動物福祉の面から、豚の飼育環境のよ
り一層の改善が必要であるとの勧告を採択している。こうした状況を受けてEUで
は、加盟国での実状を踏まえた検討が行われてきた。今回の改定により加盟各国
は、今後、国内での法律改正などを行い、2003年1月からこれらの要件を適用し
なければならない。しかし、一方では、養豚農家にとって設備投資など新たなコ
スト負担が求められることから、輸出市場における価格競争力の低下を懸念する
声も出ている。また、世界貿易機関(WTO)においても、EUは動物福祉が課題の
1つと主張しており、今後の展開が注目される。
群飼養の飼養環境を改善
10月23日に改定された豚の管理基準(10月23日理事会指令2001/88/EC)で
は、飼育環境、最低面積などに重点が置かれた。改正の内容は以下のとおりであ
る。
@コンクリート製すのこを、群飼育時の床材として用いる場合について、最大隙
間幅および最低板幅を、豚の種類に応じた基準に沿ったものとすること
A経産豚および未経産豚(経産豚の飼養頭数が10頭以上の農場に限る)は、種付
け後4週目から分娩予定の1週前まで群飼育をすること。また、群飼育時には、
各個体に十分に給餌される給餌システムとすること。なお、特に攻撃的な豚や
病気の時などは、一時的な個別飼育を認める。群飼育の場合、経産豚および未
経産豚1頭あたりの床面積は、それぞれ2.25u、1.64u以上とする。
B豚が飢えを満たし、よく噛むように、乾乳期の妊娠豚には、高カロリーの飼料
に加え、かさばる高繊維質の飼料を十分に与えること
C豚の飼育に従事する者に対し、関連規則についての指導を受けさせること
最低照度や騒音レベルも設定
11月9日に改定された豚の管理基準(11月9日委員会指令2001/93/EC)で
は、照度や騒音基準、種類ごとの飼育条件などに重点が置かれた。改正の内容は
以下のとおりである。
@豚飼育施設における連続騒音レベルは、85デシベル以下にすること。また、不
断、突然の騒音を防止すること
A1日8時間以上は40ルックス以上の照度下で豚を飼育すること
B豚が鼻で地面を掘り、物を探す活動ができるように、わら、乾草、木、のこ屑
などを常時十分に用意すること
C2週齢を超える豚については、常に十分な量の新鮮な水を飲めるようにすること
D治療・診断目的以外で、豚の体を傷つけることは、次の場合に限る。
・生後7日までに、子豚の歯の角を削るか切り取り、滑らかにすること
・ほかの個体への危害防止および安全面から、雄豚の牙を短くすること
・尾の一部分を切り取ること:断尾
・(組織をむしりとる以外の方法による)去勢
・屋外で飼育する場合の国内法に従った鼻輪
ただし、子豚の歯削り、断尾は、実施前に、飼育環境や飼育密度などを考慮
し、環境を改善しても、母豚の乳頭やほかの豚を噛むことが防止できない場合
に限り実施すること
E豚の種類ごとの飼育条件
(雄豚)
自然交配も行われる畜舎について、最低床面積は成雄豚1頭につき10u以上と
し、畜舎内に障害物を置かないこと。なお、本規定は、新たに建てられる新築・
再築の建物では2003年1月から適用し、すべての飼育場については2005年1月か
ら適用する。
(子豚)
母豚や子豚の福祉や健康に悪影響がある場合を除き、子豚は28日齢まで母豚か
ら離乳してはならない。ただし、母豚が飼育される場所と別の建物で、子豚への
病気の伝染を防ぐために消毒などが実施された特別な畜舎へ移動する場合には、
最高7日離乳を早めることができる。
(離乳豚および育成豚)
群飼育を行う場合、正常な行動を超えた闘争を回避するための措置を講ずるこ
と。もし、激しい闘争の気配が認められたら、その原因を究明し、例えば豚にわ
らを十分に与えるなどの適切な措置を講ずること。特に攻撃的な豚は、群から隔
離すること。
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