NLISと小売販売のリンクを検討(豪州)
NLISの電子データと小売バーコードを結び付け
豪州では99年から電子耳標を用いた全国家畜個体識別制度(NLIS)が肉用牛
生産者の任意参加で開始されているが、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、
「ファームからフォークまで」(Farm to Fork)と銘打って、牛肉の小売販売
とNLISのデータを連結し、追跡可能性をさらに高める計画を発表した。
今回発表された計画の内容は、The European Article Number(EAN)と言わ
れる国際方式のバーコードシステムとNLISの電子データとの結び付けを行うもの
とされる。
大手企業も参加し、試験を重ねる
この結び付けは、まず、MLAと食肉処理加工業者であるオーストラリア・カン
トリー・チョイス(ACC)社によって、試験的に実施され、加工される製品の追
跡可能性を確保するとしている。MLAでは、今後さらに国内で試験を重ねること
とし、米国向け牛肉輸出においても来年6月までには、豪州食肉協会(AMC)の
協力を得て試験を実施する計画があることを発表している。また、豪州最大の食
肉処理加工業者であるオーストラリア・ミート・ホールディング(AMH)社や日
系資本の食肉処理加工業者も参加、実施の準備があることを示唆している。なお、
ACC社は、製品の追跡可能性の精度をより高めるため、枝肉ごとのDNAサンプリ
ングも試験的に行っている。
MLA開発担当のアトキンソン博士は、食品の安全性が世界的に重要課題となっ
ており、消費者はその流通過程の透明性に対してコストを負担することになると
述べ、併せて、今回の計画ではさらに、豪州国内の統一的なシステムとすること
により、効率性の向上やコスト削減なども期待できるとしている。
安全性への意識が高まる中、NLISについての議論は続く
NLISが開始された背景には、EUが98年にEU向け牛肉への成長促進ホルモン剤の
使用に関する検査体制の見直しと、肉牛生産農場まで確実にトレースできる個体
識別制度の確立を要求したことがあげられる。その後、EU向け牛肉に限りNLISが
義務化された(「畜産の情報」2000年6月号参照)。
NLISは、農林漁業省、豪州検疫検査局、豪州肉牛生産者協議会、豪州フィード
ロット協会など、政府・業界の団体で構成するセーフミートが管理運営の責任を
負っているが、実際にはMLAがセーフミートからの委託によりその事務等を行っ
ている。
MLAによると現在、NLISに参加している生産者数は6,400戸以上、家畜市場は30、
食肉処理場は18とされている。NLISに使用される電子耳標は、1個約3.5豪ドル
(約231円:1豪ドル=66円)であり、また、生産者が使用する電子耳標読取り
機器(集計およびデータ交信用コンピュータ含む、)が一式約4千豪ドル(約26
万4千円、生産者聞き取り)でその費用は生産者が負担している。
一方、NLISの義務化をめぐり生産者団体と連邦政府の誰が費用を負担するかで
意見が別れ、今年5月にトラス農相が、義務化に関して消極的な発言を行ったこ
とは、記憶に新しく、今後も食肉産業界と政府の議論は続く模様である。
MLAは、今年末までにNLIS開始以来2年間の蓄積データを生産者へフィードバ
ックする予定もあり、データの有効活用の糸口も見え始めた。今回の試験が成功
し確実なものとなれば、小売パックから食肉処理場、生産農場、さらに個体へと
追跡が可能となり、国内、国外を問わず消費者の高まる安全性への要求を満たす
こととなるであろう。
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