輸出拡大を目指す豪州豚肉業界


年間輸出額2億豪ドル突破へ期待

 今年7月に豪州豚肉主要3団体が統合し、活動を開始したオーストラリア・ポ
ーク・リミテッド(APL)が11月19日、初めての年次総会を開催した。その中で、
豪州豚肉産業は90年代後半からの重要な構造変化が非常に良い形で引き続いてい
ると総括し、今年の豚肉輸出は全期間にわたって高いレベルで推移しており、特
にシンガポールや日本への輸出強化によって、年間輸出額2億豪ドル(約132億
円:1豪ドル=66円)突破へ期待がかかるとしている。


他国の家畜疾病から学び、市場拡大の機会ととらえる

 今年の豚肉輸出状況については、政府統計によれば、9月までに、輸出量が約
4万1千トン、輸出額が1億7,700万豪ドル(約117億円)となっている。すで
に金額ベースでは99年および2000年の年間水準を上回っている(99年:約3万
2千トン、約1億3千万豪ドル(約85億8千万円)、2000年:4万2千トン、約
1億6,800万豪ドル(約110億8,800万円))ことから、2億豪ドルの大台突破は
確実とみられる。

 また、APLは豪州豚肉産業にさらなる利益をもたらす戦略計画として、飼料価
格と生産コスト動向の注視、輸出市場の拡大、家畜衛生ステイタスの維持、製品
の品質向上などに力点を置いて進めるとしている。

 中でも、ポーク・セーフと呼ばれる豚肉産業の新たな危機管理計画に着手し、
家畜疾病の不測の侵入を防ぐためにすべての豚の精液の輸入禁止を要請するとし
ている。APLでは、豪州豚肉産業成長の大きな要因として、他の国における口蹄
疫などの家畜疾病の発生を挙げており、重要なことは、他国の教訓を学び、効果
的な危機の防止・準備・管理計画を整えておくことであるとしている。

 さらに、輸出市場に関する戦略の1つとしても、家畜疾病の危険が低い豪州産
豚肉が、市場に出回る契機ととらえ、特に日本向け輸出について今後3年間で少
なくとも5倍に引き上げることを目指すと表明している。APLでは、日本は1年
間に豪州の生産量を大きく上回る豚肉を輸入しているとし、生産量を増加させる
ことを課題に挙げている。


国内市場向けの品質低下が懸念材料

 一方でこの総会では、生産者から輸出拡大戦略ばかりに重点を置くことに対し
て問題提起もされている。主にベーコン向けとなる去勢されていない豚が、最近
の輸出量の急激な増加に伴う国内への供給不足から、品質の劣るものが国内市場
に出回っているため、国内消費に悪影響を及ぼしているのではないかと指摘し、
豪州産本来の脂肪が少なく安価なものを目指した長年の努力が報われていないと
失望感を表したものである。APLは、生産者の意見に対しては、今後、食材とし
ての豚肉の特性を調査することとしている。

 輸出拡大に向けて意欲的な豪州の豚肉業界ではあるが、それを実現するために
は、まずは生産の拡大、また、国内市場への製品供給のバランスの調整など課題
は多い。

元のページに戻る