マレーシア政府がプランテーションに畜産複合経営を要請
農地不足を打開する目的で大規模農場に要請
マレーシアのマハティール首相は10月下旬、開催された農畜産業への投資に係
るセミナーにおいて、同国における食料輸入の支出削減および農地に適した土地
の不足傾向を打開する目的で、アブラヤシなどを栽培するプランテーションを営
む大規模農場に対し家畜を導入した複合的な農場経営を行うよう要請した。
マレーシア農業省によると、同国における今年の食料輸入に係る支出は、前年
比5.6%増の120億リンギ(約3,840億円:1リンギ=32円)に達すると試算され
ている。同支出額は、人口の増加および食生活の変化に伴って急増しており、85
年の35億リンギ(約1,120億円)から、この15年間で約3.4倍に膨れ上がってい
る。こうした増加傾向は、割高な輸入品の増大に反対する消費者の非難の的とな
っており、98年に当該支出が100億リンギ(約3,200億円)を超過した際に、政府
は、国内農産物の生産を刺激するための対策として、10億リンギ(約320億円)
の農業支援措置を講じている。しかし、農産物の増産を図るために、この支援策
の下で農地を増やそうにも適当な土地が残されていないことが大きな問題となっ
ている。
同国は、ルック・イースト政策をはじめとした工業立国への傾斜にいち早く移
行し、アセアンの中でも目覚しい経済発展を遂げてきた。しかし、そうした産業
構造の変化の中で農畜産業の位置付けは相対的に低下してきており、農民の保護
の目的だけではなく、食料安全保障の面からも農業を再び重視する政策への転換
が図られようとしている。当セミナーでは、同国の食料生産セクターは限りない
潜在能力を有しており、革新的な技術を用いることによって国内の需要を満たす
だけではなく、将来的には余剰食料の輸出さえ可能であるとする研究結果も発表
された。
食肉自給率やアブラヤシ農場経営の収益性の向上に期待
首相とともにセミナーに出席したエフェンディ農業大臣は、効率的な農業生産
を行う観点から、アブラヤシをはじめとしたプランテーションを営む大農場が、
広大な敷地を有効利用して畜産業へ参入することの役割は大きいと強調している。
同大臣は、国内には農畜産業を営むための良質な農地が不足しており、既存のプ
ランテーションが、新たな農地スペースとして有効利用できる唯一の存在である
こと、また、現在、同国では約400万ヘクタールあるアブラヤシ農場の敷地内で
約100万頭の牛が飼養できるにもかかわらず、わずか10万頭が飼養されているに
過ぎないことを明らかにし、農場の複合経営への積極的な参加を呼び掛けた。
また、同大臣は、この事業が軌道に乗れば、現在23%である食肉の自給率を2
020年には28%に押し上げることが可能であることや、収益性は高い反面、時と
して生産の安定性を欠くアブラヤシ農場経営をバックアップし得ることを挙げ、
当事業に対する政府の期待の大きさもうかがわせている。
当セミナーでは、首相による畜産業への投資の検討依頼に対して、各農場のオ
ーナーは一様に同意を表したとされている。政府も技術的な援助をはじめとして
いかなる協力も惜しまないとしており、これらの大規模農場による畜産業への参
入が進めば、同国における農畜産業を再び重視する政策の推進力も徐々に強まっ
ていくものと思われる。
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