シンガポール向けに初生ひな輸出を開始(タイ)
鶏卵生産はシンガポールで例外的な畜産業
タイ鶏卵生産・流通・輸出協会によれば、チャロン・ポカパン(CP)社はシン
ガポールから10万4千羽の初生ひな輸出を受注し、今後も継続的に輸出すること
が期待されている。タイは、これまでシンガポール向けの初生ひなや鶏卵の輸出
実績がほとんどなく、国内の鶏卵消費が伸び悩む中、高い収益性が期待できるシ
ンガポール向けの輸出に期待が高まっている。
シンガポールは、国土が狭隘であることから、国内にほとんど畜産業がなく、
畜産物の大半を隣国であるインドネシアとマレーシアに依存している。しかし、
鶏卵だけは例外で、島内西北部の農業技術団地に7戸の養鶏場があり、合計で約
370万羽の卵用鶏(このうち成鶏は、推計で約170万羽)が飼養されている。現在
の生産量は日産約105万個で自給率約35%程度だが、生産者は近い将来、これを
日産160万個、自給率53%程度まで増産したい考えである。
シンガポールへの輸出には厳格な検査をクリアすることが必要
シンガポールには、種鶏場がなく、これまで初生ひなはインドネシアから供給
を受けていたが、衛生上の問題が発生したことから、タイからの輸入に踏み切っ
た。しかし、シンガポールでは生きた家畜および畜産物の輸入に際しては、農産
食品・獣医庁による書類審査と現地調査をクリアする必要があり、同庁の検査は
厳格であることで知られている。昨年、ミャンマーが鶏卵の輸出を行った際には、
コンテナ到着後の検査で一部のコンテナからサルモネラ菌が検出され、当該コン
テナを含む全コンテナが返却処分になった例がある。今回も、同庁は出荷元候補
となったタイの5農場の全鶏舎の鶏からの血液サンプル採取を求めたが、これを
嫌がって4農場が供給を断念している。検査の結果、100サンプル中6サンプル
でサルモネラ菌が検出されたが、タイ農業協同組合省畜産開発局の強い要請によ
り再検査を実施したところ検出数がゼロとなり、輸入承認の運びとなった。この
ような煩雑な手続きは必要であるものの、ひなの価格は1羽当たり25〜27バーツ
(約73〜78円:1バーツ=2.9円)と通常のタイでの国内販売価格である10バー
ツ(約29円)程度を大幅に上回っており、輸送コストを考慮しても収益性の高い
ものとなっている。
鶏卵の輸出実現を目指すタイ
タイ農業協同組合省畜産開発局は、今回の初生ひなでの成功に続き、シンガポ
ール向けに鶏卵の輸出も実現しようと、農産食品・獣医庁との交渉を継続してい
る。タイの年間1人当たりの鶏卵消費量は132個程度で伸び悩んでいるが、シン
ガポールは推計で同270個程度と東南アジア諸国では最高水準にあるとみられて
おり、国内生産で不足する分はマレーシアからの輸入に依存している。マレーシ
ア産の鶏卵の輸出価格は1個当たり22セン(約7円:1セン=0.33円)程度であ
るのに対し、タイ産の鶏卵は11月上旬に香港向けに輸出したもので同1.74〜2.
21バーツ(約5〜6円)であり、十分に価格競争力があるとみられている。
タイの同局は、主に衛生上の観点から、農場の品質証明制度を運用しており、
すでにブロイラーと豚肉では品質証明書の交付を行っている。しかし、鶏卵につ
いては、生産者・卸業者共に住所などを公開していないため、品質証明を受けた
者がなく、タイ産鶏卵の品質に対する国内外の消費者の信頼を得ることが今後の
課題となっている。
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