米農務省、養豚経営を対象にした保険プログラムを試行


畜産経営に対して初の保険制度を導入

 米農務省(USDA)は11月21日、豚価低下時のリスク管理対策として、アイオワ
州の養豚経営を対象にした2つの保険プログラムの試行を決定した。これらは、
農家におけるセーフティ・ネットの強化のため、連邦作物保険法の改正法として
昨年6月に成立した農業リスク保護法(Agriculture Risk Protection Act 
of 2000)に基づく畜産パイロット・プログラムとして実施される。これまでは、
連邦政府が支援する畜産経営に対する保険制度は認められていなかったため、今
回初めて、その道が開かれることとなった。


リスク管理対策として最も有効な手法について評価

 法律上、畜産パイロット・プログラムの対象となる畜種は、肉牛、羊、豚、山
羊、家きんなど全般に及ぶ。USDAの連邦作物保険公社(FCIC)は、2004年まで
の間に2つ以上のパイロット・プログラムを実施し、畜産経営にとってのリスク
管理対策として最も有効な手法について評価することとされており、その手法と
しては、先物・オプション取引の活用や、価格・収入の変動、生産量の減少に対
する保険の活用が挙げられている。予算規模は、2001〜2002年が1千万ドル(約
12億3千万円:1ドル=123円)、2003年が1千5百万ドル(約18億4,500万円)、
2004年が2千万ドル(約24億6千万円)である。


アイオワ州の養豚経営をケース・スタディとして試行

 今回決定されたパイロット・プログラムが、なぜアイオワ州の養豚経営に焦点
を当てたのかについては明らかにされていないが、豚肉価格は生産の増減による
影響を受けやすく、米国では98〜99年に歴史的な豚価の下落を経験するなど、セ
ーフティ・ネットの創設が養豚関係者からも求められていること、アイオワ州は、
豚飼養頭数第1位を誇る、家族経営主体の伝統的生産州であることなどから、ケ
ース・スタディとしても最適との判断があったものと考えられる。試行される2
つのプログラムの概要は、以下のとおりである(いずれもアイオワ州内のすべて
の郡内にある養豚経営を対象とし、FCICが民間の保険会社を通じて実施する)。

@畜産粗収入パイロット・プログラム

 最低30日間の肥育を前提。保険期間は6ヵ月間で、その間の対象頭数は1万5
千頭が上限。飼料コスト(トウモロコシや大豆粕の価格)が上昇または肉豚価格
が低下した場合、各生産者が選択した保証割合(85〜100%)に応じて一定の粗
収入が保証される仕組み。肉豚および飼料の価格は、先物契約による。保険は20
02年7月に販売開始(同年8月1日〜翌年1月31日が最初の対象期間)。

A畜産リスク保護パイロット・プログラム

 保険期間は90日、120日、150日、180日の4種類であり、年間対象頭数は3万
2千頭。指標となる肉豚価格が各生産者の選択した保証価格を下回った場合、保
証割合(70〜95%)に応じて保険金が支払われる。保険は2002年4月に販売が開
始され、年間を通じて販売される。

 今回のパイロット・プログラムの成果いかんによっては、将来において、対象
となる畜種や地域の拡大、さらには、作物保険のようないわゆる恒久的な措置へ
の移行も考えられ、今後も注視が必要であろう。

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