米農務省、BSEに関する危険性評価報告書を公表
家畜または公衆衛生上の問題になることはないとの結論
米農務省(USDA)は11月30日、牛海綿状脳症(BSE)の発生などに関する危険
性を評価した調査報告書を発表した。この調査は98年4月に、科学的な分析に基
づく既存のBSE対策の評価や、必要と考えられる追加的な措置の特定を目的とし
て、ハーバード大学危険性評価センターに委託して実施されたものである。
同報告書では、BSEの生物学的側面、EU(特にイギリス)での経緯、米国での
関連対策、農家や食肉加工場での実態などの調査に基づいて立てられた様々な仮
説のシナリオについて、統計学的手法で分析が行われた。
これによれば、USDAや米保健社会福祉省食品医薬品局(FDA)による早い段階
からの対策により、米国でBSEが発生する危険性は極めて低く、また、発生した
場合でも、その拡大は非常に限定的なものになるため、BSEが家畜または公衆衛
生上の問題になることはないと結論付けている。
農務長官、サーベイランス頭数の増加、食肉加工処理の改善などの対策強化を発表
ベネマン農務長官は、同報告書の公表の際に、BSEに対する「守りや警戒を緩
めるわけにはいかない」と述べ、さらに安全性を高めるために、BSE対策を強化
していくことを明らかにした。その内容は次の通りである。
(1)BSEサーベイランスの対象頭数の引き上げ。2001年の約5,000頭から2002年
には1万2,500頭以上に増加させる。
(2)追加的な規制の概要を示した政策オプションペーパーの公表。これは、潜
在的な感染の危険性のある物質を食品供給から確実に除外し続ける目的で検
討されるもの。具体的には、
@特定家畜由来の脳や脊髄の食品への使用禁止、
A骨なし牛肉製品における中枢神経系組織の使用禁止(付着禁止)、
B起立不能の牛を含む特定の牛の脊柱についての、AMR(骨に付着した食肉を
機械で取り除くシステム)の禁止、が含まれる。
これらのオプションを提示するとともに、一般からコメントを募集し、その後
適切な規制措置を行う予定。
(3)牛のと畜時における特定のスタンニング(失神)方法を禁止する規則の提
案。
(4)農場や牧場で死亡した家畜の処分に関する追加的な規則のオプションを検
討するための規則提案の事前通知。
一方、飼料規則(反すう動物へのほ乳動物由来たん白質の給与禁止)の不完全
な遵守状況が一部で問題視されていることについて、FDAは、こうした状況の改
善を図るための活動をさらに強化していくことや、来年に向けた同規則の見直し
などの意向を明らかにしている。なお、同規則の遵守状況は、今回の危険性の評
価には織り込まれている。
関係団体は現在の対策の有効性が確認されたと評価
今回の発表を受け、肉牛生産者の団体である全米牛肉・肉牛生産者協会(NCBA)
のシュローダー最高経営責任者は声明を発表し、イギリスでのBSE発生以来、米
国が行ってきた輸入規制、サーベイランスおよび飼料規制という3つの対策が効
果的で、正しいものであったことが確認されたと述べた。また、食肉加工業者の
団体である米国食肉協会(AMI)も、現在の対策を評価する一方で、USDAの対策
強化については、今後示されるオプションペーパーを注意深く検討し、科学に基
づく適切な措置であれば、支持を惜しまないとする声明を発表した。
なお、USDAは今回の調査報告書について、同領域の専門家による評価を実施し、
科学的な信頼性を確認することとしている。
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