農村の活性化に貢献する牛市場(ミャンマー)

シンガポール駐在員事務所 宮本 敏行、小林 誠


 
 牛は多いときには600頭程度が集まる。この
日の市には約120頭が参集していた。参加料は
1頭当たり300チャット(約51円:100チャット
=17円)。
ひとくちメモ

 ミャンマーをはじめとした東南アジア地域の農業の現場では、農作機械に代わ
る動力源として、いまだに牛が水牛とともに重用されている。交通インフラが未
発達のミャンマーでは、農耕以外にも長距離移動の手段や物資の運搬用に牛車が
使われるなど、牛は住民の暮らしに欠かせないものとなっている。こうしたこと
から、同国政府は、国民生活に密着した牛の頭数維持を図るため、15歳以下の牛
のと畜を法律で禁止している。現在、ミャンマーで飼養される牛はほとんどが役
牛と言ってよく、肉用としての肥育は皆無に等しい。しかし、同国畜水省による
と、2002年4月にタイから8頭の肥育用の素牛を譲り受けることになっているため、
そう遠くない将来に肥育を目的とした飼養形態が現れるものと思われる。

 バゴン管区のピイー市から首都ヤンゴンへ向かう途中にあるインマ村では、毎
週火曜日に軍営の伝統的な牛の市が開催される。このイベントは、共進会や農民
達の親睦会の意味合いも兼ねており、牛の売買を行わない農民も広く参加するな
ど地域の農村社会の活性化に大いに貢献している。
  
 民族衣装のロンジー(スカート)をまとった
村民が多く繰り出し、会場は親睦会の様相を呈
する。牛を連れた人の方がむしろ少数派。数年
前までは牛車のレースなども行われていた。

    
 係留される市参加牛。買い手は1頭1頭よく
チェックし、お目当ての牛を探す。
 売り手は、皆の前で牛を引き回したり、走ら
せたりして健康状態や運動能力を誇示する。

    
 取引の形態はすべて相対である。現在、使役
に供されている牛は1頭当たり4〜15万チャッ
ト(約6,800〜2万6,000円)、廃用牛は4〜5万
チャット(約6,800〜8,500円)が相場。
 売買が成立したら、主催者である軍に300チ
ャット(約51円)を支払うほか、仲間に酒を振
舞うのが慣しとなっている。会場の端には簡易
酒屋が立ち並んでいる。

    
 牛の首に巻く装飾品などを売る店も出店する。
市に出品された牛は、何らかの装飾を施された
ものが多く見受けられた。すなわち、市場取引
と共進会が同時に行われている。
 会場で説明をしてくれた青年兵士。彼は市を
主催する軍から派遣され、一人で会場の整理、
治安維持にあたっている。

    
 水牛は役用としての需要が高いため、会場で
は廃用のみが扱われていた。出品数も10頭前後
と少なく、相場は7〜8万チャット(約1万2千〜
1万4千円)と水牛以外の廃用牛よりも高い。

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