インドネシア、西部地域を肉牛生産エリアに


肉牛飼養頭数の減少傾向に歯止めをかけることが目的

 インドネシア政府は、近年における肉牛や山羊の飼養頭数の減少に歯止めをか
けることを念頭に、スマトラ島をはじめとした西部地域の一層の畜産振興に乗り
出した。また、豪州企業との合弁でスマトラ島に肉牛生産の拠点を設けるなど、
海外資本を受け入れることで同地域の畜産業の活性化を図る試みも始まっている。

 同国では、宗教上の理由から豚肉の消費が少なく、牛肉や羊肉が鶏肉とともに
重要なたんぱく源となっている。しかし、同国の2000年における肉牛および山羊
の飼養頭数はそれぞれ1,100万頭、1,257万頭で、3年前の1997年と比較すると7.8
%、11.3%減少している。こうした飼養頭数の減少傾向を食い止めるため、農業
省畜産総局長はこのほど、スマトラ島など同国の西部地域を、消費地へ家畜を供
給する生産エリアとして育成していくと宣言した。特に、スマトラ島は、日本の
本州の2倍という広い土地面積に対し人口は3千万人台に過ぎず、最大の消費地で
ある首都ジャカルタを擁するジャワ島に隣接していることから、今後の食料生産
基地として大きな期待が寄せられている。


牛肉自給に向けて肉牛増頭計画

 同国政府は、2005年を目途として、国内で消費する牛肉のほぼすべてを自給す
る計画を策定し、その実現に向けて肉牛の増頭計画を遂行してきた。しかし、従
来、同国が肉牛飼養地域として開発に力を入れてきた東ヌサテンガラ州、西ヌサ
テンガラ州、南スラウェシ州、東南スラウェシ州、南カリマンタン州、東カリマ
ンタン州、バリ州といった中部地域では、近代的な飼養技術の普及の遅延や分離
独立運動、宗教紛争の多発などによって逆に飼養頭数が減少しているという。今
回の畜産局長の声明は、肉牛生産の拠点を、遅々として成果が上がらない従来の
地域から新たな地域へシフトしていく構想を表明したものと言え、同国における
畜産政策の一つの転換点として注目される。

 また、同総局長は、今年中に2万頭の繁殖牛を輸入し、西部を中心として飼養
頭数の減少が見られる地域に供給していくと発表した。併せて、人工授精の普及
を強化するため、東ジャワ州のシンゴサリおよび西ジャワ州のレンバンに設置さ
れている種畜センターの機能を拡充し、今年は250万本の凍結精液の生産に努め
たいとしている。さらに、凍結精液の広範な流通を図るべく、17州で新たな種畜
センター設立に着手する計画も示している。


豪州企業との協力により生産振興を試み

 一方、海外からの投資を受け入れることで、同地域を肉牛生産の拠点として振
興しようとする試みも始まっている。西スマトラ州投資委員会によると、豪州で
3月5〜7日に農業および食料に関するセミナーが開催され、西スマトラ州政府お
よび豪州の民間企業による肉牛生産の合弁事業が発足しつつあるとされる。同州
政府は、すでに法整備やインフラなどに係る実行計画の策定を完了したと言われ、
新たな生産拠点としての意気込みを表明している。また、他方では、南オースト
ラリア州政府が、西ジャワ州における肉牛飼養を中心とするアグリビジネスへの
投資を促進する動きを見せており、西部地域に対する海外資本の投資意欲は次第
に強まっていると言える。

 インドネシアの西部地域は、スマトラ島北部のアチェ州の独立紛争など一部に
不安定要素は存在するものの、消費地に近いことから輸送コストやインフラなど
の面で有利な点も多い。同地域に対する期待は今後益々高まるものと思われる。

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