米会計検査院、国内のBSE対策の評価レポートを公表 ● 米 国


現行の連邦政府のBSE対策は不十分と指摘

 米会計検査院(GAO)は2月26日、米国内で講じられている牛海綿状脳症
(BSE)対策についての評価報告書を公表した。この報告書は、上院農業委員
会のハーキン委員長(民主党)、ルーガー上院議員(前委員長:共和党)および
ダービン上院議員(民主党)の3名の要請に応じて作成されたものである。

 今回の報告書でGAOは、現行の連邦政府の対策は、BSE感染牛・製品の締め出し
や、BSEが発見された場合の飼料を経由した他の牛への伝達防止、食品への混入
防止などを確保するには十分ではないと指摘している。その根拠としては、輸入
時検査の不備や、農場での死亡牛のサーベイランス対象数が少ないこと、米保健
社会福祉省(HHS)・食品医薬品局(FDA)による飼料規制(反すう動物へのほ乳
動物由来たん白質の給与禁止)の順守確保が徹底されていないこと、中枢神経系
組織の含まれる可能性のある製品を消費者が特定できるようになっていないこと
などが挙げられている。


関係省庁に対する措置の強化を勧告

 また、他国が講じている対策との比較について、輸入規制やサーベイランス頭
数の拡大などは他国よりも早い段階から実施しているが、飼料規制に関しては、
牛由来の飼料を馬や豚に給与することを認めており、他国に比べ緩やかな措置で
あるとも指摘している。

 その上でGAOは、関係省庁に対して以下のような勧告を行っている。

(1)輸入産品の検査強化のため、HHSと米農務省(USDA)は税関と協議の上、適
  切な人員配置など調整の取れた戦略を策定すること

(2)飼料規制の監督と順守の強化を図るため、HHSはFDAに対して、@必要な情
  報の入手、規制対象企業の特定化などのための州政府と連携した戦略の策定、
  A違反企業に対してとるべき行動基準や、企業が適切な改善措置を講じてい
  るかどうかを確認するための再検査手続を含む遵守確保戦略を策定するよう
  指示すること。

(3)USDAは、特定の牛肉製品について、行政サイドからの発表や警告表示などに
  よって、中枢神経系組織が含まれている可能性がある旨を消費者に対して知
  らせることが適当かどうかの検討などを行うこと(HHSも、他の食品、化粧品、
  医薬品について同様の検討を行うこと)

(4)USDAは、サーベイランス強化のため、農場での死亡牛の検査頭数を増やすこ
  と。


USDAおよび関係業界は批判的な見解

 報告書の中には、HHS(FDA)とUSDAからの反論を含むコメント(さらに、これ
に対するGAOの見解)も掲載されている。USDAからはベネマン農務長官が、GAO報
告書の公表と合わせて、GAOの尽力は多とするが、この報告書は、@米国でのBSE
発生の危険性は極めて低いとするハーバード大学の危険性評価報告書の結論や勧
告を適切に認識していない、A我々からの広範囲にわたる指摘にもかかわらず、
科学的、技術的な誤りが訂正されていない、B対策強化のためこれまで各省庁に
よって講じられてきた追加的な措置が、その勧告内容には適切に考慮されていな
い、という批判的な見解を明らかにした。また、関係業界からもアメリカ食肉協
会(AMI)やアメリカ飼料産業協会(AFIA)が、GAO報告書には誤りや見落としが
あるとの声明を出した。

 一方、前述のダービン上院議員は、今回の報告書を受けて、@輸入食肉製品に
ついての種類や原産地に関するより詳細な情報提供の義務付け、A病畜の肉や中
枢神経系組織などの使用に対する新たな規制などを含む法案を近々提出する意向
を明らかにしている。

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