◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)によると、2002年8月の肥育豚価格(生体重換算、全米平均取 引価格)は、前年同月比33.3%安の100ポンド当たり35.0ドル(1キログラム当た り約92円:1ドル=119円、以下同じ)となった。価格は、2001年10月からおおむね 前年同月を下回って推移しており、8月としては、1971年来の低水準となった。 ◇図:肥育豚価格の推移(生体重量、全米平均、赤身率51〜52%)◇
価格下落の背景には生産量の増加が挙げられる。肉豚のと畜頭数は4月以降、ほ ぼ前年同月を上回って推移しており、1〜8月の累計では前年同期比1.9%増の6,48 4万7千頭となり、生産量では前年同期比3.1%増の579万3千トンとなった。これは、 中西部を中心とした干ばつの発生でトウモロコシ価格が上昇しているため、収益 性の悪化を懸念した生産者が肉豚の早期出荷などを行ったことによるものと見ら れる。 なお、USDAは、8月の価格が低落した要因について、一時的に高水準のと畜が行 われたことによるものであり、これが98年のような暴落につながるものではない との見解を示している。98年12月には、肥育豚価格が16.6ドル(約44円)にまで 下落するなど、養豚経営に大打撃を与えた。
一方、需要面について見ると、2002年上半期(1〜6月)の豚肉輸出量(枝肉重 量ベース)は、前年同期比4.8%減の36万2千トンとなった。国別で見ると、全輸 出量の約5割のシェアを占める日本向けはわずかに前年を上回り(0.2%増)、カ ナダ向けは前年同期比2.8%増となった。これは、カナダ産豚肉の輸出が好調であ ったことから、国内向けの供給が不足したため、それを補うために米国からの輸 入が増えたものと見られる。第2位のメキシコ向けは、景気低迷やドル高などから 前年同期比1.7%減、さらにロシア向けは、価格の安いブラジルや中国との競合な どから、同61.8%減となった。国内でも、ロシア向け鶏肉輸出の停止や牛肉生産 の増加などから、食肉全体が供給増となり、こうしたことも価格の下落の一因と されている。 今後についてUSDAでは、短期的には軽い重量での肥育豚の出荷増が続き、市場 を圧迫すると予測している。肥育豚価格については、第3四半期(7〜9月)が35〜 37ドル(約92〜97円)、第4四半期(10〜12月)が28〜30ドル(約73〜79円)、通 年では34〜35ドル(約89〜92円)で推移すると見込まれている。 ◇図:豚肉の国別輸出量(上半期)◇
USDAでは、最近の肥育豚価格の低迷を受け、学校給食プログラム向けなどとし て、追加的に3千万ドル(約35億7千万円)相当の豚肉(ひき肉、ハムなどの製品 を含む)を緊急買い上げすると発表した。これによって、今年度の合計買上げ数 量は、前年度の2倍強に相当する6,600万ポンド(約3万トン)におよぶと見込まれ ている。今回の措置により、価格の下落の下落傾向にどこまで歯止めがかかるの か注目される。
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