干ばつの中の豪州酪農

シドニー事務所、企画課


VIC州北部
 VIC州北部の農場風景。初秋とも言える3月
は、牧草が枯れていく季節でもある。しかし、
今シーズンは、このような褐色の風景が11月
頃から続いており、加工原料向けに牧草の生
育に合わせた季節的な生産を主体とするこの
州では、すでにシーズン前半の生産を終えた
ため、生乳生産への影響は大きい。
 VIC州北部の酪農家。牧草はほとんどなく、
乾いている。すでにかんがい用水を使い切っ
た農家もあれば、干ばつの長期化に備えて水
を残している農家もある。
ひとくちMemo

 2002年に入って豪州では著しい降雨不足に陥っており、豪州連邦・州政府が
干ばつの被害に対する支援策を次々と打ち出すなど深刻な状況であった。

 豪州気象局によると、最近1年間(2002年3月〜2003年2月)の降雨量は、ク
インズランド州、ニューサウスウェールズ(NSW)州北部、南オーストラリア
州東部、ビクトリア(VIC)州北部などで、平均降雨量(1961〜90年までの平
均)の40〜60%程度となっている。

 畜産における干ばつの影響は、牧草の生育状態の悪化を起因とした牛の出荷
増加による牛と畜頭数の増加と生乳生産の減少、飼料穀物の作付け面積および
生産量の減少などがある。

 酪農生産の中心地帯であり、生乳生産に与える干ばつの影響が深刻と伝えら
れているVIC州北部と、干ばつの被害にあったものの2月中旬に降雨に恵まれた
NSW州中東部の生産現場を紹介する。


NSW州中部
 NSW中部の酪農家。同地域で
は、訪問時(3月上旬)の2週間
ほど前から雨が降るようになっ
たため、干ばつという印象は受
けない。大規模経営のこの農家
では、飲用向け生乳生産を主体
としており、従来から周年生産
に備えてかなりの自給飼料を生
産しているため何とか経営を維
持できているとのこと。自給飼
料の生産には、右下の写真のよ
うなかんがい設備を使用してい
る。

    

    

    

    

    

    

    
 NSW州中部。草は伸びてはい
るが、数センチと短く、地表も
乾いて割れている。

 豪州気象局では、エルニーニ
ョ現象の影響は弱まり、干ばつ
も終息に向かうとみているが、
今シーズンの干ばつによる生産
基盤の縮小に加え、今後の牧草
の生育にかかわる表土層の損傷
など、来シーズンへの影響が懸
念される。

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