◇絵でみる需給動向◇
ニュージーランド(NZ)農林省が発表した農家経営状況調査報告書によると、 2001/02年度(6〜5月)の酪農家の農業所得(売上高から生産費を引いたもの) は、NZ平均で前年度比5.1%増の19万1,025NZドル(約1,299万円:1NZドル=68 円)となった。前年度は、強い需要を反映した国際乳製品市況が高値で推移し、 輸出が好調であったことから生産者乳価が高値となり、酪農家の農業所得は前 年度比119.1%増と大幅な伸びを示した(本誌2001年10月号参照)。2001/02 年度についても、生産者乳価は前年度比6.0%高の乳固形分1キログラム当たり 5.31NZドル(約361円)と引き続き高い水準となったが、増加率は5%台にとど まった。 (当該調査報告書は、各地域20戸の農家を対象に行っているもの。) 表1 地域別酪農家1戸当たりの経常利益の推移 資料 :MAF 注1 :2002/03年度は調査対象農家による予測値 2 :NZ平均は加重平均 表2 調査対象農家の経営規模 資料:MAF
報告書によると、2001/02年度の酪農家の農業所得は、すべての地域で増加 を示した前年度とは異なり、地域ごとの増減率に格差があった。酪農地帯であ るノースランドは、前年度比7.9%減の15万4,903NZドル(約1,053万円)とな った。生乳生産量の増加と生産者乳価の上昇、牛の販売価格の上昇から、売上 高は前年度比3.6%増加している。一方、生産費については、冬から春にかけ ての天候不順のための飼料購入費などで支出が増加し、全体では同14.0%増加 した。
また、農業所得が前年度を最も大きく下回ったのは南島南部のサウスランド である。南島は北島と比べて経営規模が2〜3倍となっているため、サウスラン ドの農業所得は平均を大きく上回っているものの、前年度と比べると15.1%減 となった。前年度と比較すると、売上高は前年度比16.9%の増加、生産費につ いては、恒久的な(臨時ではない)支払給与、飼料、肥料、機械の修繕・更新 費用などで35.0%増加している。MAFによると、前年度に好調であったため、 他産業からの参入者が多く従業員を増やしたこと、生産性を高めるための濃厚 飼料および農業機械の購入などが要因であるとしており、サウスランドにおけ る農業所得の減少は、積極的な経営戦略による生産費の上昇が要因と言える。
調査対象農家による2002/03年度における農業所得予測は、すべての地域で 前年度と比較して26〜43%の減少になるとしている。この要因は、同年の生産 者乳価が前年度比で20%以上の安値が予測されることとしている。これまでは 増加傾向で推移してきた酪農家の農業所得であるが、乳製品国際市況やNZドル の動向によっては、今後、さらに厳しいものとなることも予想される。
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